人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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丑のつく名字

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2009/01/05 10:41

2009年の最初は、丑のつく名字ではじめよう。

とはいっても、「丑」のつく名字は少ない。一番多いのは長野県にある「丑山」。松本以北に広がり、百世帯ほどある。長野は「牛山」という名字も多く、全国にいる「牛山」さん半数以上は長野県在住。茅野市を中心に諏訪地方に非常に多く、茅野市では市内で4番目に多い名字が「牛山」である。

次いで多いのが「丑田」と「丑久保」で、ともに六十世帯ほど。「丑田」は宮城・兵庫・広島などにあり、「丑久保」は埼玉県北部の行田市と羽生市に集中している。埼玉から群馬南部にかけては「牛久保」姓の多いところで、行田付近に住んでいた「牛久保」さんの一部が、「丑久保」に変えたものだろう。

一方、「牛田」の方は愛知県の尾張地方に集中しており、「丑田」姓の分布とは重なっていない。

これ以下は、「丑沢」「丑木」「丑屋」の順で、いずれもかなり珍しい名字である。歴史的には、加賀藩士に丑島家があったことが知られているが、現在では岩手や愛知にわずかしかしない。

ルーツ的には、「牛」と「丑」は同じ。牛は古くから農耕に使われており、名字としての使用率も高い。この「牛」のついた名字の人の一部が、分家した際に同じ意味の漢字に変えたのが「丑」のつく名字の由来である。
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