人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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長野選手のこと

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2008/11/04 09:43

10月30日、プロ野球のドラフト会議が開かれた。注目されていた東海大相模高の大田泰示選手は、本人の希望通り巨人が抽選で引き当てて、ドラフト1巡目で指名した。しかし、もう一人巨人を熱望していたホンダの長野久義選手は、巨人ではなくロッテが2巡目で指名している。

ところでこの選手、名字は「ながの」ではなく「ちょうの」と読む。東京の電話帳をみると、「ながの」は数百軒掲載されているが、「ちょうの」は数軒しかない。かなり珍しい名字の部類だろう。

長野選手の出身高校は、福岡県太宰府市にある筑陽学園高校。しかし、長野選手自身は佐賀県の基山町の出身である。地図でみるとわかるが、佐賀県の東部は福岡県に食い込んでおり、この食い込みの先端が基山町。従って、基山町は佐賀県とはいいながら、福岡市や久留米市のベッドタウンで、経済的には福岡都市圏の一部になっているのだ。

手元にあった1990年代後半の基山町の電話帳を広げると、「長野」という名字は66軒掲載されている。このうち、「ながの」と読むのはわずかに4軒で、残りの62軒は「ちょうの」である。90%以上が「ちょうの」で、基山町では「長野」という名字は「ちょうの」と読むのが普通なのだ。隣の鳥栖市でも「ちょうの」の方が「ながの」より多い。

「ちょうの」さんが全国にどれ位いるかはよくわからないが、「ちょうの」と読む「長野」さんのルーツは、基山町付近にある、と考えて間違いなさそうだ。
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