人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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モンゴルの名字

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2008/08/18 10:01

北京五輪では女子柔道が順調にメダルを獲得したのに対し、男子柔道は最初の内柴選手と最後の石井選手の金メダル以外は完全に低迷した。中でも一番驚いたのは、100キロ級の鈴木桂治選手。1回戦と敗者復活でともに1本負けという完敗に終わった。1回戦で鈴木を破ったツブシンバヤルは、そのまま勝ち上がり決勝も制してモンゴルの初の五輪金メダルをもたらしている。

さて、この選手、新聞には「ナイダン・ツブシンバヤル」と書かれている。北京五輪の公式サイトでは「NAIDAN Tuvshinbayar」と表記されており、これを見るかぎりでは、「ナイダン」が名字というように受け取られる。

一般的には、モンゴルには名字ないとされる。しかし、昔からずっとなかったわけではなく、かつては名字があった。中国の影響を排除するために廃止した、というのが実情らしい。以後は、「父親の名前」+「本人の名前」というのがモンゴル人の名前になっている。

しかし、数年前にモンゴルでも「名字」の制度が復活した。とはいっても、すでに昔の名字が失われている家も多く、自分で新しい名字をいろいろと創造したようだ。ただし、タイでもそうだが、新設した名字制度は日常生活には浸透しない。現在のモンゴル人の正式な名前は「名字」+「父親の名前」+「本人の名前」なのだが、一般的には「名字」の部分は使用されていない。たとえば、朝青龍の本名の「ドルゴルスレン・ダグワドルジ」の「ドルゴルスレン」は父親の名前で、名字ではないのだ。

「ナイダン・ツブシンバヤル」の「ツブシンバヤル」が本人の名前であることは間違いないとして、「ナイダン」は「名字」と「父親の名前」のどちらにあたるのはよくわからない。おそらく「父親の名前」ではないかとおもうのだが。
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