人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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巨人の隠善選手

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2008/03/10 09:21

各地でプロ野球のオープン戦が行われ、仙台育英高出身の佐藤由規選手や、大阪桐蔭高出身の中田翔選手など、ルーキーの活躍がスポーツ紙を賑わしている。もちろん、一軍入りを狙っているのはルーキーだけでなく、二軍選手も一軍昇格をかけて同じ土俵で戦っている。

こうした中、巨人で育成選手の活躍が話題になっている。育成選手とは、いわば期間限定のお試し制度のようなもので、二軍で好成績をあげれば無事本採用となるが、3年以内に昇格できなければ自動的に解雇となる厳しいもの。巨人は積極的に育成制度を活用している球団で、今年はその中から隠善智也選手が注目を集めている。

この「隠善」という名字、広島県東広島市の八本松地区にのみあるもので、非常に珍しい。以前から気になっていたが、4日付のスポーツニッポン新聞に、名字の説明が掲載されていた。それによると、もともとは「隠居」と呼ばれていた家(屋号のようなものか)が、戸籍に載せる際に「隠善」にしたものという。

実は、こういった命名はわりとよく行われた。明治になって戸籍に登録する際、屋号などから名字にしたものも多いが、その際名字らしくないものは、漢字の一部を変更したり、削除したりして登録した。秋田に多い「〜谷」という名字は、「〜屋」という屋号の「屋」を「谷」に変えたものなのだ。

こういう事情は、その家にだけ伝わっているものにので、第三者は知る機会がない。隠善選手が活躍しなければ、おそらくこんな情報が世に出ることはなかったに違いない。今後も稀少姓選手の活躍を期待しよう。
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