人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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明治神宮野球大会と筒香選手

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2007/11/12 11:09

11日、雨で1日順延となった明治神宮野球大会の高校生の部を見てきた。どんよりとして肌寒い天候だったが、外野を解放していないこともあり、内野スタンドの9割近くは埋まっていた。



観客の目当てはおそらく横浜高。すでに、来年選抜では優勝候補の筆頭といわれ、関係者の間からも松坂以来の春夏連覇が目標、という声も聞こえる。

このチームを支えているのが、来年秋のドラフトの目玉といわれる2年生の土屋投手と、再来年のドラフトの目玉と目されている1年生の3番打者筒香選手である。

筒香選手は南関東や静岡からの進学者が多い横浜高校の中では珍しく、関西のボーイズリーグの出身。筒香という名字は、おそらく全国でも数世帯しかない稀少なものである。

和歌山県北部、高野山の麓を紀ノ川の支流である丹生川が流れている(奈良県側にも同名の川がある)。この流域を筒香地区といい、住所でいえば和歌山県伊都郡高野町の大字下筒香、中筒香、上筒香である。峠を越えると、奈良県の十津川にも近い山の中である。

ところが、この地名は「つつが」という。一方、筒香選手の読みは「つつごう」。しかし、大会パンフレットによると、筒香選手の出身は高野山への入口にあたる橋本市立隅田中学で、ここがルーツである、と考えるのが妥当だろう。

「筒香」地名は、もともとは「つつがわ」で「筒川」と書いていたらしい。いつのまにか語尾の「わ」が発音されなくなったものだ。つまり、「筒川」→「つつがわ」→「つつが」→「筒香」となったわけで、さらに「香」の漢字の音から「つつごう」と変化することは驚くには値しない。

などと考えているうちに、14−2と7回コールドで関東一高に圧勝した。筒香選手は3四球にあって2打数ノーヒットと快音は聞かれなかったが、打席では1年生とは思えぬ風格がただよっていた。来年には「筒香」という珍しい名字が新聞を賑わす可能性が高そうだ。
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