人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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ドラフト指名選手の名字

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2005/11/21 09:34

 18日、大学生と社会人を対象とした、プロ野球の第2次ドラフトが行われ、49人の選手が指名された。ここ数年、アメリカのマイナーリーグや、独立リーグ出身の選手が次々と指名されて話題になっていたが、今年は広島の指名した一人だけ。国内に初めて誕生した独立リーグ、四国アイランドリーグの選手は一人も指名されず、プロ野球の裾野を広げよう、という活動に水を差した形になった。
 さて、指名された49人の名字を一覧すると、異彩を放っているのが、広島が3巡目で指名した梵選手。これで、「そよぎ」と読む超難読姓である。
 私の知るかぎり、「梵」という名字があるのは広島県西部の安芸地方のみで、名乗っている人もごくわずか。今回指名された梵英心選手も安芸北部の三次市の出身である。
 「梵」とは、仏教において宇宙を支配する根源的な原理、というようなもの。ルーツはヒンドゥー教の創造神ブラフマンである。この「梵」が人格をともなって具現化されたのが「梵天」で、寅さんで有名な「帝釈天」と一対の像として祭られていることが多い。
 明治になって名字が必須となった際、僧侶は、俗世の名字に戻すのではなく、仏教用語などから新たに自らの名字を選ぶことが多かった。そのため、僧侶の家系には難読の名字が多い。梵選手も実家はお寺。
 では、どうして「梵」と書いて「そよぎ」と読むのだろうか。これは、「梵」という漢字の本来の意味が「木の上を風が吹く様」だからであろう。
 僧侶とは、ただ仏典に通じているだけではないのだ。
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