一生モノのスキルになる!
『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法 <連載第81回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に精通する山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は「角を立てない伝え方」について。
「指摘する」のではなく、丁寧に確認しよう
先方の間違いを指摘するときは、ストレートに指摘するのではなく、尋ねるような形で丁寧に確認するのがセオリーです。また、金額や数量などの数字、人名や社名、商品名といった固有名詞が間違っている場合には、大きなトラブルに発展する恐れがあるため、訂正を求めましょう。
〈文例1〉
次回の打ち合わせの日程の件、
ご連絡いただき、ありがとうございました。
一点、確認がございます。――★1
打ち合わせの日時が「3月11日(火)」とありましたが、11日は月曜日です。
「3月11日(月) 」か「3月12日(火)」の誤りでしょうか。――★2
恐れ入りますが、ご確認いただけますと幸いです。――★3
どうぞよろしくお願いいたします。
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★ポイント1:いきなり本題に入らない
メールの冒頭でいきなり「間違いの指摘」という本題に入ると、相手にキツい印象を与えてしまうことも。まずは「確認したいことがある」という柔らかいアプローチで伝えましょう。
★ポイント2:ストレートに指摘しない
「誤りです」「間違っています」「間違いですよね?」などとストレートに指摘すると、相手もいい気持ちはしません。「〜の誤りでしょうか」「〜と違っているようです」のように、“確認する”形の表現を選びましょう。
★ポイント3:クッション言葉を交えて結ぶ
「恐れ入りますが〜」「ご多用中恐縮ですが〜」「お手数ではございますが〜」のように、相手を気づかうクッション言葉を添えると、さらに印象がソフトになります。
苦情を伝えることの目的は「問題解決」にあり
メールで苦情を伝える際は、苦情の内容をわかりやすく指摘したうえで、相手にしてもらいたい対応や改善策を具体的に伝えることが大切です。仕事における苦情メールは、相手を責めるものではありません。問題を効率よく解決するためのもの、と心得ておきましょう。
〈文例2〉
本日、商品「あっぱれ君」が届きましたが、 30個のうち5個の紙パッケージが破けておりました(添付写真参照)。――★1
この状態では、弊社会員に提供することができないため、交換を希望いたします。お手数ですが、明日(17日)までに同じ商品5個をお送りいただくことは可能でしょうか。――★2
2カ月ほど前にも同じような破損があり、 指摘させていただいたことがあります。発送前の検品に注力いただくなど、 対策を徹底いただけますと幸いです。――★3
どうぞよろしくお願いいたします。
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★ポイント1:苦情の内容をわかりやすく示す
相手がすぐに状況を把握できるよう、問題点などを具体的に漏れなく示します。伝えたいことが多い場合は、箇条書きにしましょう。
★ポイント2:してもらいたい対応策を具体的に伝える
相手のミスにより自分(自社)が置かれた状況を伝え、「いつまでに、どのような対応をしてほしいのか」を明確に伝えましょう。
★ポイント3:改善を促す
二度と同じミスがないよう、改善を促します。相手の怠慢や悪意が明らかな場合は、「今後も同じことが続くようであれば、貴社からの仕入れを停止することも検討しなければなりません」などと、厳しく伝えることも検討しましょう。
相手との人間関係を壊すことは得策ではない
指摘や苦情を伝える際、相手に対してイラっとしたり、感情が高ぶったりすることもあるでしょう。しかし、そこで感情をストレートにぶつけても、自分にも相手にも、得なことはひとつもありせん。
相手を責めることなく、冷静かつ丁寧に言葉を紡ぐことによって、相手が指摘を受け入れ、課題解決に向けて行動してくれやすくなります。指摘や苦情を伝えるメールを書くときは、一呼吸置いてから書くことをオススメします。
山口 拓朗(やまぐち たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。