一生モノのスキルになる!
『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法 <連載第80回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に精通する山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は「お礼メール」について。
「自分の言葉」と「具体的な描写」が大切
お礼のメールは、相手と信頼関係を築くための重要なコミュニケーションです。形式的なあいさつで終わらせず、具体的に「何が良かったのか」「どのような価値を得たのか」「何を楽しんだのか」などの情報を自分の言葉で伝えましょう。
以下は、会食のお礼を伝えるメール文例です。
〈文例〉
佐藤さま
お世話になっております。
木村です。
昨晩はお忙しいなか、お時間をいただき、誠にありがとうございました。
佐藤さんおすすめの「彩月」で、季節の食材をふんだんに使ったお料理を堪能し、特別なひとときを過ごすことができました。
とくに穴子の天ぷらが美味で、今でも口の中に余韻が残っています。――★1
佐藤さんにご教授いただいたマーケティングの最新動向についてのお話が刺激的で、大変勉強になりました。
とくに、弊社の新規プロジェクトに関するご提案が明確で、一気にイメージがふくらみました。
“思い立ったが吉日”とばかりに、早速進めてまいります。――★2
また進捗をご報告させていただきたく存じます。
今後ともご指導ご鞭撻いただけますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。――★3
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〈文例〉に盛り込んだポイントは次の3点です。このように会食で親交を深めた場合は、丁寧さを心がけながら、そのときの雰囲気がリアルに浮かぶような表現でお礼を伝えましょう。
★ポイント1:お店や料理について触れる
もし相手が会食のセッティングをしてくれたのであれば、そのお店や料理に関する感想を添えると良いでしょう。「気に入ってくれて良かった」と安心してもらえるはずです。
★ポイント2:感謝の気持ちを具体的に伝える
会食時に感じた感謝や喜びを具体的に表現することで、相手も「会食して良かった」「また誘いたい」と感じやすくなります。「“思い立ったが吉日”とばかりに〜」など、実感を伴った言い回しが効果的です。
★ポイント3:今後のつながりを示す
メール本文の結びで、相手と〈より良い関係を築いていきたい〉という意図を伝えましょう。
使える「お礼フレーズ」一覧
お礼のメールを書く際は、相手の立場や相手との関係性などTPO(※)に気を配りましょう。とくに相手から貴重な時間やアイデア、人脈などをいただいたときは、「近藤様とのご縁をいただき、お礼の言葉もありません。心より感謝申し上げます」のように、お礼の言葉を重ねて、感謝の気持ちを強めに伝えることが大切です。
最後に、お礼メールに使えるフレーズをご紹介します。TPOをわきまえながらお使いください。
※TPO=Time(時)、Place(場所)、Occasion(場面・場合)
【一般的な感謝の表現】
・誠にありがとうございます。
・感謝しております。
・助かりました。
【深い感謝を示す表現】
・心より感謝申し上げます。
・深く感謝申し上げます。
・厚く御礼申し上げます。
・感謝してやみません。
・ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。
・お礼の申し上げようもございません。
・深謝いたします。
・痛み入ります。
・重ねて御礼申し上げます。
【心情を伴った感謝の表現】
・大変うれしく思います。
・身に余る光栄です。
・感激で胸がいっぱいになりました。
・○○していただき、感激しております。
・誠に頭が下がる思いです。
・お気持ちが心に染みました。
【具体的な行動に対する感謝の表現】
・このたびは○○いただき、誠にありがとうございます。
・親身になって○○していただき、ありがとうございます。
・おかげ様で○○することができました。
・ご支援を賜り、ありがとうございます。
・ご配慮いただき、ありがとうございます。
・ご尽力いただき、ありがとうございます。
・ご教示いただき、ありがとうございます。
・ご協力いただき、ありがとうございます。
・お力添えいただき、ありがとうございます。
・いつも無理を聞いていただき、ありがとうございます。
・貴重なご助言をいただき、ありがとうございます。
・ご足労いただき、ありがとうございます。
・身に余るお言葉をいただき、恐縮に存じます。
・至福の時間を過ごさせていただきました。
・過分なお心づかいを頂戴し、感激しております。
・○○様のご尽力のおかげです。
・○○様のご指導の賜物です。
【迅速な対応に対する感謝の表現】
・早速のご対応をありがとうございます。
・迅速なご対応をありがとうございます。
・早急なご対応をありがとうございます。
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山口 拓朗(やまぐち たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。