日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2024/03/12 10:23
「光る君へ」に瀧内公美演じる源明子が登場した。後に藤原道長の妻となる。ただし嫡妻は源倫子で、明子は妾妻である。この源明子、「みなもとのあきこ」と呼ばれていたが、実際には違っていた可能性が高い。
そもそも当時の女性の名はわからないことが多い。極めて身分の高い女性のみ名前が判明しているが、それでも漢字表記だけで読み方は不明だ。紫式部が仕えたことで有名な藤原彰子も、その読みがわからないため一般的に「しょうし」と呼ばれているにすぎない。しかし、ドラマ中で「しょうし」というのはあまりにも不自然なため「あきこ」という名で登場する。
同じく、清少納言が仕えたことで知られる藤原定子も「ていし」と言われているが、こちらも「さだこ」となるようだ。しかし、朝廷では入内する女性の名に濁音は使わないことになっている。江戸時代初期、後水尾天皇の皇后となった徳川秀忠の娘和子は、本来は「かずこ」だったが、「ず」が濁音であるために、入内した際に「まさこ」と改めているのだ。
従って、「定子」も入内している以上「さだこ」ではないとも思われるのだが、では何かといわれる全く分からない。ドラマ上名前がないと困るので、濁音には目をつぶって「さだこ」とする以外には方法はなさそうだ。
さらに「明子」の場合は、本当は違う読み方であった可能性が高い。というのも、この時代より150年ほど前の清和天皇の母藤原明子は「あきらけいこ」であったことがわかっているからだ。
ちょっと想像のつかない読み方だが、実は古語で「明し」と書くと「あけらけし」と読む。『日本国語大辞典』には「事柄がはっきりしていて疑う余地がない。明白である」と書かれている。「明子」が「あきらけし」「こ」の音便作用で「あきらけいこ」となることには、当時としては違和感がなかったのだろう。
従って、源明子も「あきらけいこ」だった可能性が高いのだが確証は全くなく、やはりドラマでは「あきこ」とするのが無難である。平安時代をドラマ化すると、いろいろと難しい問題が生じてくる。