日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2024/02/06 10:15
新潟県十日町市に松之山温泉という温泉がある。新潟県と長野県の県境付近に位置するこの地は、日本を代表する豪雪地帯として有名で、冬の間は雪に埋もれてしまう。
そんな豪雪地帯の温泉に一度行ってみたいというのもあり、雪に埋もれているであろう1月に訪れた。
北越急行ほくほく線のまつだい駅で降りると、駅の周囲は真っ白。駅前には設置されている草間彌生のオブジェも雪の中だ。松之山温泉はここから10キロほど。バス便もあるのだが、この日は旅館から迎えに来てもらった。
平成9年にまつだい駅が開業した当時ここは松代(まつだい)町で、松之山温泉は松之山町とそれぞれ独立した自治体だった。平成大合併で中魚沼郡の川西町、中里村とともに十日町市に合併している。そして、古い時代には松代と松之山はあわせて松之山郷と呼ばれていた。さらに松代は「松平」であったという。
しかし江戸時代初期に松平忠輝が領主として赴任してきたため、主君の名字を憚って「まつだい」に変え、漢字を「松代」にしたと伝わる。江戸時代、殿様の名字は恐れ多いもので、同じ名字の人は名字を変えることが多かった。地名でも同じことがあったのだろう。
ところが「松代」というと真田家の城下町、信州松代と同じである。信州松代は10万石の城下町。現在では長野市の一部となっているものの、その知名度は高く、「松代」を見ると「まつしろ」と読む人が圧倒的に多いだろう。そのため、ほくほく線の駅が松代(まつだい)にできた際、駅名はひらがなで「まつだい」となった。
さて、松之山温泉である。南北朝時代に、ここで鷹が治療しているのを樵が見つけて温泉の存在を知ったという伝説があり、戦国時代には上杉氏の隠し湯として用いられた。江戸時代後期には広く知られていたようだ。
日本一の豪雪地帯と聞いていた割には雪が少ない。道の両脇に数十センチ積もっているくらいだ。宿の人に聞くと、今年は記録的に雪が少なく、例年ならすでに2メートルは積もっているとのこと。おまけに翌日朝に起きると、外は雨が降っていた。1月の新潟県の山中でまさかの雨である。驚くほどの雪を見てみたい、という南国育ちの夢は持ち越しとなった。