一生モノのスキルになる!
『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法 <連載第72回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に精通する山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は「アイデアの引き出し」について。
投稿ネタの引き出しを増やそう!
SNSに投稿する際「何を書けばいいかわからない」という相談をよく受けます。そういう人の多くが、投稿ネタの引き出しを持っていません(あるいは、引き出しが少ない状態です)。今回は、SNS初心者がすぐに使える投稿ネタのバリエーションを紹介します。
(1)あなたの「気づき」を書く
多かれ少なかれ、人間は何かしらの気づきを得ながら日々を生きています。世の中のトレンドの変化に気づく。仕事を早く終わらせるコツに気づく。街の変化に気づく。自分のクセに気づく。○○を上手にやる方法に気づく。自分の感情に気づく——など。気づいたことは、投稿ネタになり得ます。気づいた瞬間に、メモ代わりとしてX(旧Twitter)などでつぶやいてもいいでしょう。
(2)あなたの「楽しい」を書く
「楽しい」は格好の投稿ネタです。友人と○○旅行に行った。おもしろい映画を見た。おいしい○○を食べた。推しメンが主演のドラマが始まった。大好きなゲームを攻略中。お気に入りのブランドの服を買った——など。「楽しい」は、書き手自身にとってテンションの上がるネタです。「いいね!」やコメントがつけば、その「楽しさ」はより増幅し、幸せな気持ちになれるでしょう。
(3)あなたの「挑戦」を書く
大小を問わず、挑戦する姿は人の心を打つものです。TOEICに挑戦する。フルマラソンに挑戦する。初めてピアノを習う。起業する。初めて○○料理を作ってみる。農業体験をしてみる。小説を書いてみる——など。お風呂のカビ取りにチャレンジ! だってOK。あなたが挑戦する姿に、多くの人が勇気づけられるでしょう。同時に、応援や励ましの声がたくさん届くでしょう。
(4)あなたの「弱み・失敗」を書く
自分の弱みも投稿ネタとして使えます。早起きが苦手。家事が苦手。人見知り。運動が苦手。数字が苦手——など。同時に、失敗談も投稿ネタになり得ます。うっかり○○してしまった話。頑張ったけど歯が立たなかった話。何度も繰り返してしまう常習犯的失敗——など。弱みや失敗談を語れる人は、オープンマインドな人です。あなたの人間味や素直さが伝わるため、フォロワーも親近感を抱くでしょう。
(5)あなたの「夢」を書く
あなたが友達に、胸を高鳴らせながら夢を語っている時、あなたのエネルギーは高く、目の前の友達の心を引きつけていることでしょう。それと同じ感覚で、SNSにも投稿してみましょう。夢を書くと実現しやすくなる。これは古今東西、あらゆる夢の実現者が語っている方法です。また、SNSで発信をすることで、あなたを応援したいという人が現れやすくなります。
(6)あなたの「人生のターニングポイント」を書く
人生のターニングポイント(転機)は強力なネタです。ある人と出会ったこと。ある会社に転職したこと。一冊の本を読んだこと。一本の映画を見たこと。ある人からアドバイスをもらったこと——など。人生ターニングポイントと、その前後の違い(変化)を語ることで、あなたの“人となり”が伝わるほか、共感する人も現れるはずです。
(7)あなたの「感動」を書く
感動は「するもの」ではなく「してしまうもの」。感動をシェアすることで、あなたの「自分らしさ」や人柄が伝わりやすくなります。夕焼けを見て感動する。スポーツを見て感動する。美しい建築に感動する。よくできた脚本に感動する。おいしい料理に感動する——など、感動のポイントは人それぞれ。それゆえ、SNSで語るに値するわけです。あなたが伝えた感動の投稿に、共感・感動する人も出てくるでしょう。
(8)あなたの「シンドい」を書く
「シンドいこと」も発信ネタです。ケガや病気をしている。パートナーとケンカしている。理不尽な扱いを受けている。○○が思うようにいかない——など。シンドいことを発信することで、あなたのシンドさも和らいでいくでしょう。また、フォロワーからの共感や励ましのコメントが、あなたを勇気づけることもあります。シンドさを語る際は、誰かの悪口にならないようにだけ注意しましょう。
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このように投稿ネタの引き出しバリエーションを増やしておくことで、SNS投稿時の「書くことがない」という悩みから解放されます。迷った時は、ここでご紹介した投稿ネタをお使いください。
紹介する対象に光を当てて、いきなり「『会話が弾む秘訣BEST100』という本がおすすめです」と書いたところで、「読みたいです!」「買います!」という反応は期待できません。なぜなら、その本の魅力を具体的にイメージしにくいからです。
一方で、序盤で書き手の体験を書くことによって、「会話が怖い……気持ちわかるなあ」「そうそう、わたしも1対1の会話が苦手!」のように、読者の共感が生まれやすくなります。
山口拓朗(やまぐち・たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。