一生モノのスキルになる!
『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法 <連載第69回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に精通する山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は「説得力のある文章」について。
「理由なき結論」の不親切さ
「ねえ、実は会社を辞めようと思うんだ」 と突然、親友が言ってきたとしましょう。あなたなら、どう反応しますか? この情報だけでは、多くの人は「辞めたいなら辞めなよ」や「辞めないほうがいいと思うけど」とは簡単には言えないでしょう。
ほとんどの人が「どうしてだ?」「何かあった?」「理由は?」「何か事情でも?」と、その背景にある理由を聞こうとするでしょう。そう、人は理由がわからないものに対して、その良し悪しを判断することを苦手にしているのです。
文章の書き方にも同じことが言えます。どれほど優れた内容であっても、理由が不明瞭だと読む人に納得してもらうことができません。
ジョギングが高血圧に良いとされるのはなぜ?
たとえば、こんな説明文があったとしましょう。
高血圧にはジョギングが効果的です。ぜひ試してみてください。
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あなたが、仮に高血圧だったとして、この助言に従いますか。おそらく従う気にはならないでしょう。なぜなら、どうして高血圧の人にジョギングがお勧めなのか。この文章には、肝心の理由が書かれていないからです。
では、こちらはいかがでしょう?
高血圧にはジョギングが効果的です。ジョギングには心臓のポンプ効率を高め、血圧を下げる効果があります。また、心肺機能の向上やストレス解消にも役立ち、高血圧や循環器系疾患のリスクを減らす助けにもなります。ぜひ試してみてください。
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理由を明確に示したこの文章なら、「そんな効果があるなら、試してみる価値はあるかもしれない」と感じるかもしれません。このように、理由を記すことは、文章の説得力を高めるうえで重要な要素です。
驚きと共に、その理由もセットで伝える
ほかにも例を挙げましょう。
映画『インターステラー』を見ました。よくあるSF映画なのだろうと期待していませんでしたが、予想外の新しい視点に驚かされました。
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残念ながら、この文章を読んだ人が映画の魅力を完全に理解することはないでしょう。なぜなら、驚きの理由がまったく記されていないからです。「新しい視点」とは何か? その理由が書かれていないことによって、読者はむしろモヤモヤしてしまいます。
映画『インターステラー』を見ました。よくあるSF映画なのだろうと期待していませんでしたが、予想外の新しい視点に驚かされました。 この映画は、単なる宇宙描写を超え、人間の心理や家族の絆、さらには時空を超えた愛のテーマが深く描かれており、強烈な印象を残します。
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「予想外の新しい視点に驚かされた」と、その理由を詳しく説明したこの文章であれば、読者が消化不良を感じることはありません。その理由に興味を持った人は「近いうちに『インターステラー』を見てみよう」と思うかもしれません。
「理由」とは、「Why(なぜ)」の答えです。読む人の納得度が高まる、説得力のある文章を書きたいななら、「Why(なぜ)」の答えを必ず入れるようにしましょう。
山口拓朗(やまぐち・たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書は『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。