一生モノのスキルになる!
『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法 <連載第68回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に精通する山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は「読む人の視点」について。
「わかりにくい=伝わらない」はビジネス文章の敵!
「文章がわかりにくいと言われてしまう。どうすれば改善できるのか?」――筆者は、ときどき、ビジネスパーソンからこの手の質問を受けることがあります。今回は、その質問に対する答えをお伝えします。
ビジネスの現場では、明確でわかりやすい文章が不可欠です。しかし、どうしても伝えたいことが多くなり、結果として文章が冗長になってしまうことも。そこで、わかりやすい文章の書き方のポイントを5つに絞ってお伝えします。
ポイント1:冒頭で結論を明確にする
ビジネス文章の冒頭では、伝えたいテーマや結論を簡潔に示すことが大切です。以下は、結論を明確にした一例です。
【報告書の冒頭】
「昨年度に実施したオンラインツールの導入により、営業成績が20%向上しました。本報告では、その成功要因と今後の展望について詳述します」
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【提案書の冒頭】
「新しいオンラインツールの導入を通じて、販売促進チームの効率を30%向上させることが可能です。以下、具体的な導入方法と予想される効果について提案いたします」
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このように、文章の冒頭で結論を明確にすることで、読む人の理解度が格段に高まります。
ポイント2:文脈を整える
文章の流れ、つまり文脈が整っていないと、読む人は迷ってしまいます。情報が「A→B→C→B→C→A」のように脈絡なく並んでいると、理解が妨げられるからです。
AならA、CならCという具合に、同一の情報をまとめる意識が肝心。「A→B→C」とスムーズな流れにすることによって、読む人のストレスが軽減されて、理解が進みやすくなります。
ポイント3:説明不足を避ける
ビジネスの現場では、専門用語や業界用語が多用されることがあります。しかし、読む側のすべてがその用語を理解しているわけではありません。とくに、読む人の知識レベルや読解レベルが低いと判断した際は、そのつど適切な説明を添えましょう。
【専門用語のみ】
「インターオペラビリティの導入を検討しています」
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【専門用語+説明】
「インターオペラビリティの導入を検討しています。インターオペラビリティとは、異なるシステムやプロダクトが共に機能する能力のこと。たとえば、異なるメーカーの製品が互換性を持って連携・協働することなどがその一例です」
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ポイント4:ビジュアルを工夫する
段落のない「文字がぎっちり」な文章は読みにくいもの。適切な段落分けを行うことで、情報の区切りや構造が明確になり、読む人の理解を助けることができます。
なお、情報ごと(段落ごと)の区切りを明確にしたいときは、適切な接続詞を使ったり、段落の前後に空白の行(スペース)を用いたりする方法もおすすめです。
また、漢字とひらがなのバランスも文章の読みやすさに影響します。理想のバランスは、「漢字が3割、ひらがなが7割」と言われています。このバランスを意識することで、読む人に負担がかかりにくくなります。
なお、オンライン上で文章を書く際は、文字そのものにも工夫を凝らしましょう。文字(フォント)の選択はもちろん、文字の色や配置、全体のバランスなど、さまざまな要素が読みやすさに影響を与えます。必要に応じて、太字(ボールド)やイタリック、下線、網掛け(マーカー)、囲み線などの使用も検討しましょう。
ポイント5:不要な情報は省く
情報過多は、読む人にとってノイズになります。伝えたいことを明確にするためにも、不要な情報は省きましょう。不要な情報とは、ビジネス文章においては「読む人にとって価値の低い情報」のことを指します。不要な情報を見極めるためにも、あらかじめ読む人のニーズを把握しておきましょう。
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ビジネスシーンで文章を書く際は、お伝えした1〜5のポイントを踏まえたうえで、さらに「読む人の立場に立った考え方」を大切にしましょう。
相手は何を知りたいのか、どんな情報を求めているのか、どの順番で情報を得たいのか、どのような文体が読みやすいのか、どのような言葉が理解しやすいのか――これらを常に「読む人の視点」で考慮することで、わかりやすい文章を書く確率が向上します。
山口拓朗(やまぐち・たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書は『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。