『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

「細部描写力」を高めて、印象に残る文章を書こう

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2023/09/06 13:03

Photo by VHpDp_GkGgc/Unsplash

一生モノのスキルになる!
『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法  <連載第67回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に精通する山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は「リアリティの高め方」について。

「おいしかった」では何も伝わらない?

たとえば、次の文章を読んでみてください。

【1】おいしいタンタン麺でした。

【2】おもしろい映画でした。

【3】汚い机である。

いかがでしょう? 伝えたいことはわかりますが、いずれも印象に残りにくい文章です。

「おいしい」「おもしろい」「汚い」――このようなザックリとした、表層的な言葉だけでは、読む人にその様子や書き手の気持ちをリアルに伝えることはできません。もちろん、読む人の興味・関心を引きつけることも難しいでしょう。

もしも、読む人の興味・関心を引きたいなら、「表層」ではなく「深層」へと切れ込んでいく必要があります。そのために必要なスキルが「細部描写力」です。

「細部描写力」とは読んで字の如し、「細部を描き写す力」のことです。

細部描写力が磨かれていくと、目の前の様子や光景について、あるいは、書き手自身の感情や感覚、感性など、あらゆる事柄を魅力的に文章化できるようになります。

「細部描写力」を駆使してリアリティを高める

先ほどの3つの文章を「細部描写力」を使って加筆してみます。

【1】おいしいタンタン麺でした。香ばしい胡麻の風味とスパイシーな刺激が絶妙なスープは、ほどよい弾力の「ツルツル麺」との相性も抜群! 一口ごとにその深い味わいを楽しみ、幸せを感じました。


【2】おもしろい映画でした。愛と憎悪、建前と本音、善意と悪意――相反する要素を緻密に編み込んだドラマは、一筋縄ではいかない人間社会の縮図そのもの。リアリティのある設定に問答無用で引き込まれました。


【3】汚い机である。書類の山に、使用済みの付箋、パサパサに乾いたスナック菓子……それらが互いに共謀しながら机の中央を占拠中。机の端にぽつんと置かれた高級ペンケースだけが、所在なさげにしている。

このように、細部描写力を駆使して書き込むことで、文章の深みと色彩が増し、読む人の気持ちが引き込まれていきます。

細部を書き込むことに難しさを感じる人は、「パサパサに乾いたスナック菓子」のように、「名詞(=スナック菓子)」の前に「修飾語(=パサパサに乾いた)」を添える言語化からスタートしてみましょう。

文章に「神」を宿らせよう!

「神は細部(ディテール)に宿る」 by ミース・ファンデルローエ(独・建築家)

この有名な言葉の意味は「細部をおろそかにしては、全体の美しさは得られない」「細部の仕上がりこそが、作品の価値を決める」というもの。芸術家や建築家が好んで使う言葉ですが、文章作成においても、この格言が当てはまります。

細部を書くためには、当然ながら、書き手自身が細部に目を向けなければいけません。感情、五感、記憶、事実、風景、光景――対象となる心情や様子をよく観察して細部を把握します。細部を把握したら、次に、それらを丁寧に言葉で紡いでいきます。

先ほどの「汚い机」の文例では、以下の細部を積み上げました。「書類の山」「使用済みの付箋」「パサパサに乾いたスナック菓子」「ぽつんと置かれた高級ペンケース」。これらの細部を積み上げることで「汚い机」を表現したわけです。細部の数が増えるほど、また、それらの描写が克明であるほど、文章のリアリティが高まっていきます。

ちなみに、先ほどの「汚い机」の例文は、五感のうち視覚を中心に書きましたが、嗅覚を使って「鼻の奥を突く除菌アルコールの匂い」と書いたり、触覚を使って「机の表面はベトついていて〜」と書いたりすれば、読者の脳のなかで「汚い机」がより立体的に立ち上がるはずです。

細部描写力を磨くためには、日常のさまざまなシーンや風景、自分の気持ちなどをよく観察し、それらを具体的に表現していくエクササイズが有効です。あなたの言葉の引き出しをフルに使いながら、細部を言語化する練習を重ねていきましょう。


山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書は『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

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