『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

夏休み企画2|作文は「比喩(ひゆ)表現」で個性を出そう

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2023/08/03 11:55

一生モノのスキルになる!
『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法  <連載第66回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に精通する山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は「描写のひと工夫」について。

それは「ほかの何に似ている?」と考えよう

前回の記事では「オノマトペ」を使うことで、子どもの作文が魅力的になりやすくなる、というお話をしました。

【例】モジャモジャ頭の人が、歩いていました。

この文章にもオノマトペが使われています。「モジャモジャ」と書くことによって、この人物のヘアスタイルを表現力豊かに記述しています。

一方で、この文章をさらに魅力的にする方法もあります。それが「比喩(ひゆ)」です。

「比喩」とは「物事を説明するときに、他の何かに置き換えて表現すること」。先ほどの例文であれば、モジャモジャのかみの毛を「ほかの何か」にたとえることで、作文の魅力がアップします。

以下は、「たとえ」を使った例です。

【1】モジャモジャ頭の人が歩いていました。まるで、頭の上に鳥の巣をのせているかのようでした


【2】頭がバクハツしたのか? と思うくらい、かみの毛がモジャモジャな人が歩いていました。


【3】目の前を人が歩いていました。その人のかみの毛は、大きなブロッコリーのようにモジャモジャしていました。


【4】あっ、ワンピースのブルックだ! モジャモジャ頭の男の人が歩いているのを見て、ぼくは思わずその人のことを指差してしまいました。


【5】かみの毛がモジャモジャな人が歩いていました。「朝起きたときの弟のネグセに似ている」と思いました。

「鳥の巣」「バクハツ」「大きなブロッコリー」「ワンピースのブルック」「弟のネグセ」—— いずれもオリジナリティに富んだ表現です。

あなたの子どもの目には「モジャモジャ頭」は、「他の何」 に見えるでしょうか? これを考えることによって比喩表現が生まれやすくなります。

どんな比喩表現も間違いではありません。見えたものが(=似ていると思ったものが)、その子にとっての正解です。その比喩表現の中に、その子の個性が宿るのです。

子どもがせっかくたとえたモノを、親や大人が否定・批判してはいけません。「どこがブロッコリーなのよ!」と野暮なツッコミはせず、「大きなブロッコリーに見えたんだね〜」と肯定的な声をかけてあげましょう。

対話から生まれるユニークな表現

もしも、子どもが比喩らしき表現を書いたことがないようなら、子どもに質問する形で、親がさり気なく比喩表現を引き出してあげましょう。

家族でラーメンを食べに行った。たくさん食べたパパのおなかは、いつも以上にふくらんでいた。

仮に、子どもが、このような文章を書いたなら「そのおなかは何に見えた?」と質問してみましょう。

子どもは、楽しみながら、「何に見えた?」の答えを考えるはずです。ユニークな比喩表現が口をついたら「それは、おもしろいね。せっかくだから、それも作文に書いてみようよ!」と伝えてあげましょう。

以下は、比喩を使ってパパのお腹を表現した例文です。

【1】たくさん食べたパパのおなかは、いつも以上にポッコリふくらんでいた。ぼくには、それが、大きな風船に見えた。針でつついたら、きっとバン!とわれるだろう。


【2】たくさん食べたパパのおなかは、まるでバスケットボールをかくしているんじゃないかと思うほど盛り上がっていた。


【3】たくさん食べたパパのおなかは、野球場のピッチャーマウンドのようにきれいな曲線を描いていた。

作文を書くときだけでなく、ふだんから目に映ったモノを「他の何か」にたとえるクセをつけると、子どもの観察力や発想力、ひいては作文力が磨かれていきます。

【比喩なし】服が汗でびしょびしょになりました。

【比喩あり】まるでプールにとびこんだかのように、服が汗でびしょびしょになりました。


【比喩なし】白いビーチが広がっていました。とてもきれいでした。

【比喩あり】白いビーチが広がっていました。お砂糖をたくさんまいたかのようで、とてもきれいでした。


【比喩なし】その焚き火は、はげしくもえていました。

【比喩あり】その焚き火は、まるで怒ったときのママの顔のように、はげしくもえていました。

それぞれ「比喩あり」のほうが、子どもの感性や性格が伝わってきます。文章がイキイキと躍動しています。

とくに低学年の作文指導では、「表現の正しさ」に固執するのではなく、本人に「楽しさ」や「おもしろさ」を味わわせることが先決です。この時期に「作文好き」になった子の作文力は、その後もみるみる伸びていきます。大人は子どもの「自由に表現する能力」の芽を摘まないようにしましょう。


山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書は『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

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