『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

夏休み企画1|作文は「オノマトペ」で躍動感をプラス

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2023/07/05 13:45

一生モノのスキルになる!
『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法  <連載第65回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に精通する山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は「感覚表現の活用」について。

オノマトペを使って、場面を映像化しよう!

間もなくやって来る夏休み。休みは嬉しいけど、作文の宿題がちょっぴり憂鬱——そんな子どもも少なくないはずです。今回は、小さなお子様がいる親御さんに向けて、子どもたちが楽しく作文に取り組めるようになる“声がけ”をお伝えします。

その声がけとは「オノマトペを使って自由に書いてみよう!」です。「オノマトペ」とは、「擬声語」のことで「擬音語」と「擬態語」を合わせたものです。以下にそれぞれの例をあげます。

擬音語:物が発する音や声を表現した言葉】

ガタガタ、ドンドン、コロコロ、ドバッ、パカッ、メリッ、ピーピー、ジリジリ、ベタッ、モグモグ、サクサク、クシャ、グイーン、ドッカーン、ガチャン、チャリン、プップー、ビヨーン、ドドドッ、ドテッ、ヒューヒュー、ピピピッ、チョキチョキ、ジャンジャン、ピーピー、カチャカチャ、ズッポー、ピチャピチャ……

擬態語:状態や心情、様子など、音のしないものを表現した言葉】

びくびく、ハラハラ、ゾクゾク、ワクワク、そわそわ、ニッコリ、とぼとぼ、しくしく、うとうと、ジロジロ、キョロキョロ、キリキリ、じわーっ、グダグダ、イライラ、どよーん、のそのそ、シャキッ、ギョッ、ゾクゾク、ワクワク、シーン、ガラガラ、クヨクヨ、ドキドキ、サラサラ、ツルツル、モヤモヤ、チクチク……

オノマトペを使うことによって、その場面に動きが生まれ、読む人の頭に「映像」が浮かび上がりやすくなります。その結果、作文全体の魅力も高まりやすくなります。

また、オノマトペには“響き”が含まれているので、子ども自身も、作文を書くことを楽しむことができます。なかには「どんなオノマトペを使おうかな?」と表現探しを楽しむ子どももいます。

オノマトペを使うと、受ける印象が大きく異なる

以下、【1】と【2】の文例を読み比べてください。【1】はオノマトペを使っておらず、【2】はオノマトペを使っています。受ける印象の違いを感じてみてください。

【1】→→→【2】オノマトペを使用

 

【1】クルマが走りぬけていきました。

【2】クルマがビューン走りぬけていきました。

【1】部屋がしずかで、さみしかった。

【2】部屋がシーンとしていて、さみしかった。

【1】お兄ちゃんが、ぼくの足をひっぱりました。

【2】お兄ちゃんが、ぼくの足をグイッとひっぱりました。

【1】ハンバーグを食べたら、げんきが出た!

【2】ハンバーグを食べたら、モリモリッとげんきが出た!

【1】目のまえに、大きなゾウが、あらわれたのです。

【2】目のまえに、大きなゾウが、デ〜〜ンとあらわれたのです。

【1】がまんできず、そのジュースをのみました。

【2】がまんできず、そのジュースをゴクゴクのみました。

【1】ぼくは、ラーメンをすすりました。

【2】ぼくは、ズズズッとラーメンをすすりました。

【1】手がしびれて、えんぴつがにぎれない。

【2】手がズキズキして、えんぴつがにぎれない。

【1】犬のなき声が聞こえました。

【2】クォーンと犬のなき声が聞こえました。

いずれの文例も、読む人の頭にイメージが浮かびやすいのは、【1】よりも【2】ではないでしょうか。もっと言えば、【2】には【1】にはない「躍動感」と「臨場感」があります。これこそが「映像」の正体です。

オノマトペに唯一の正解はありません。くれぐれも「『デコ〜ン』って変な表現じゃない?」などと野暮なことは言わないように。子どもが自分でその言葉を選んだ、その感性を肯定してあげましょう。突飛なオノマトペが出てきたときほど「すごいね」「いいね」「かっこいいね」「すてきだね」とホメてあげてください。

もっとも、まだ作文慣れしていない子どもであれば、「オノマトペを使って自由に書いてみよう!」と言っても、難しいかもしれません。 仮に「走っていたら転んでしまいました」と書いたとしたら、親であるあなたが「どんなふうに転んだのかな? その様子に音をつけてみようか!」と自然な形で誘導しましょう。

マンガでもよく使われるオノマトペ

子どもたちが大好きなマンガの中でもオノマトペは効果的に使われています。登場人物の顔の横に「ドキっ」と書かれていると、驚いた顔の表情と相まって、主人公の驚きがより増幅して伝わります。

バトルのシーンでは「ドーン!」「ギギギギッ!」「ドスッ」「ゴキッ」「バキューン!」のように、オノマトペだけで、迫力満点の演出をするときもあります。このように、オノマトペは、文章での説明以上に、読む人にリアルな映像を届けてくれます。

マンガを例にあげるまでもなく、子どもたちは感覚的にオノマトペが大好きです。たとえば、男の子であれば、ヒーローに変装して登場するときに「ジャーン!」などと言うのではないでしょうか。

あるいは、可愛いものが大好きな女の子であれば、「この宝石はキラキラしていてかわいいでしょ?」などと言うのではないでしょうか。おならの「ブ〜」や、うんちの「ぶりぶり〜」も子どもたちに大人気。子どもたちが日常のなかで自然に使っているオノマトペを、作文に取り入れない手はありません。

作文を書く子どもたちと、その作文を読む人たち——双方が楽しくなるのがオノマトペのいいところ。子どもがなかなか作文を書けずにいるときは、「オノマトペを使って自由に書いてみよう!」と声をかけてみましょう。


山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書は『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

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