人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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謎のバス停、伯母様

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2023/03/07 10:03

先日、以前から気になっていたバス停「伯母様」に行ってきた。

「伯母様」バス停があるのは神奈川県伊勢原市。ここに行くバスは伊勢原駅北口から出ているのだが、本数が少なく日中にはほとんどないため、大山参りで知られる大山ケーブル行のバスに乗り、途中の道灌塚前バス停で下車した。

ここから西に向かって数分歩くと、鈴川に架かる橋が見えて来る。この橋が「伯母様橋」で、ここから向かうが「伯母様」の集落のようだ。

「伯母様」という地名には由来が伝えられている。戦国時代、北条氏康の家臣の布施弾正左衛門康則の伯母にあたる梅林理香大姉が、この村を領していたことによるという。これは、小田原北条氏の「小田原衆所領役帳」に、布施弾正左衛門「廿貫文 中郡白根之内おはさま分」とあることに因むものだろう。とすると、「おはさま」はすでに地名であるように見える。

現地に行って周囲を見ると、伯母様の付近は両側から山が迫り、小さな谷間となっている。こうした地形を「はざま」といい、「狭間」「波佐間」「硲」等、色々な漢字をあてた。地名の由来は地形であることが多い。そして、地名や名字は先に「発音」が生まれ、それに後から漢字をあてることが多かった。

つまり、小さな「はざま」を意味する「おはざま」から「おばさま」となり、それに後から「伯母様」という漢字があてられたのではないだろうか。宮城県には「小迫」、大分県には「小挟間」と書く「おばさま」地名があり、「伯母様」もそうしたバリエーションの一つとみられる。

 

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