『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

書き方より重要な「文章のパワー」の秘密

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2022/11/02 15:22

(photo by Bruce Mars/Unsplash)

一生モノのスキルになる!
『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法  <連載第57回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に精通する山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は「人を動かす文章」について。

「何を言うか」より「誰が言うか」

「ビジネスパーソンとして成長したいなら、毎日、日記をつけなさい」

あなたが「ウザい」と思っている上司から、チャットでこんな文面が届きました。あなたはどんなふうに思いますか?

まったく聞き耳をもたないか、あるいは、「うるさいわ! 人間的に尊敬できないあなたの説法なんて聞きたくもない。日記なんて絶対につけない!」と(口には出さずとも)反発するのではないでしょうか。

一方で、このチャットを送ってきたのが、あなたが以前から尊敬している上司だった場合はどうでしょうか?

「尊敬する○○さんが自分にアドバイスしてくれた! 嬉しい! 早速 今日から日記をつけてみよう!」と素直に思うのではないでしょうか。

このように、言葉というのは、誰に対しても同じ効果をもたらすものではありません。同じ言葉でも、「誰が言うか」によって受け取り方が大きく変わるのです。

書き手と読み手の間にある「心理的な壁」

言葉の効果というのは、唯一絶対ではなく、書き手と読み手の関係性の中で決まります。

信頼していない相手や、嫌いな相手から何か指示されたとき  
 
心を開きにくい/言葉を受け入れにくい/聞く耳を持ちにくい
 
 
信頼している相手や、尊敬している相手から何か指示されたとき  
 
心を開きやすい/言葉を受け入れやすい/聞く耳を持ちやすい
 

逆に考えましょう。あなたが伝える側に回ったとき、あなた自身が相手から信頼・尊敬されていれば、相手があなたの言葉(指示、意見、提案、助言など)を受け入れる確率は高まります。

一方で、あなたが読む人から信頼されていなかったり、毛嫌いされていたりした場合、あなたの言葉が読む人に受け入れられる確率は下がります。

つまり、書き方や伝え方うんぬん以前の問題として、自分と相手の間にある「心理的な壁」の高低が、伝え方に影響を与えているというわけです。

それゆえ、私たちは書き方のスキルを磨くと同時に、自分自身の「人間力」を高めていかなければいけないのです。

「人を動かす文章」を書くために大切なこと

「この人は信用できる」「この人は尊敬できる」——あなたが読む人からそう思われているなら、書き方が多少ぎこちなくても、あなたの文章(文意)は読む人に刺さるでしょう。これが「人間力」が高い状態です。

「人間力」は「信用&尊敬の貯金」で測ることができます。

たとえば、あなたが日ごろから——「何事も誠実に対応する」「意欲的に仕事をする」「思いやりを持って人と接する」「人の話をよく聞く」「人のために行動する」「人に興味・関心をもつ」「しっかり挨拶をする」「人のことをよく褒める」「心をオープンにする」「謙虚さを忘れない」——といったことをしていれば、あなたの「信用&尊敬の貯金」はどんどん貯まっていくはずです。

一方で、あなたが日ごろから——「人の悪口を言う」「人に嫌味を言う」「愛想が悪い」「自慢話が多い」「人の話を聞かない」「自分勝手なふるまいに終始する」「態度が傲慢」「偉ぶる」「人の否定・批判ばかりする」「人を軽んずる」「人を無視する」「敵意を剥き出しにする」——といったことばかりしていると、いざというときに、相手に言葉を受け入れてもらいにくくなります。「信用や尊敬」がまったく貯まっていかないからです。

「自分のこと」や「自分の言葉」を受け入れてもらいたければ、まずは自分から心を開いて、「相手のこと」や「相手の言葉」を受け入れていく必要があります。文章のパワーを高められるかどうかは、書き手自身のふだんの言動にかかっているのです。


山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書は『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術――「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか25冊以上。

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