一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第49回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、文章を「書く」までに必要な3つのプロセスについて。
文章を書き始める前には3つのプロセスがある
北京オリンピックでも盛り上がったカーリング。いきなりですが、あなたはカーリングのことをよく知らない人に向けて、カーリングの魅力を文章でわかりやすく伝えることはできますか?
これまでカーリングの試合を見たことのない人や、カーリングについて調べたことのない人にとっては、なかなか難しいお題ではないでしょうか。
それでも「どうしても説明しなさい」と言われたら、どうすればいいか? 答えは「カーリングについての情報を集める」です。「ない袖」を振ることができないのと同じように、「ない情報」で文章を書くことはできません。
とはいえ、少し調べたくらいでは、わかりやすく説明することはできないかもしれません。カーリングを知らない人にその魅力をわかりやすく説明するには、ざっと以下の4つのプロセスを踏む必要があります。
【プロセス1】カーリングについて調べる
まずはカーリングについての知識をインプットします。「カーリングを扱った書籍や雑誌を読む」「インターネットで検索をする」「カーリングに詳しい人から話を聞く」「ルールブックを読む」――などの方法があります。
【プロセス2】実際にカーリングの試合を観る
実際にカーリングの試合を観ることによって、五感を使ってカーリングを理解することができます。また、白熱する試合を目の当たりにすることで、言葉による情報収集だけではわかりにくかった、カーリングの魅力を感じることができるでしょう。
【プロセス3】カーリングについて知らない人の気持ちに寄り添う
カーリングの知識を増やし、また、カーリングの魅力を実感したからといって、わかりやすい文章を書けるとは限りません。ここで大切なのが、カーリングを知らない人の立場に立ち、気持ちに寄り添うということ。カーリングに明るくない人に対し、「どういう言葉」で、「どういう順番」で、「どれくらい噛み砕いて」伝えればいいのか。徹底的に考えなければいけません。
【プロセス4】その人たちが理解できるよう、わかりやすい文章を作る
情報が集まり、読む人の気持ちに寄り添う意識をもったら、いよいよ文章作成です。わかりやすさのポイントは、「日本語文法を正しく使う」「助詞(てにをは)を適切に使う」「句読点を適切に打つ」「平易な(やさしい)言葉で書く」「できる限り専門用語を使わない」「理解しやすい構成を心がける(セオリーは『幹→枝→葉』の順」など。誤解や誤読を招かないよう書き方を工夫する必要があります。
情報収集や実体験こそ「書く技術」
もうおわかりだと思いますが、書く作業は均等割すると全体の25%にすぎません。つまり、残り75%(プロセス1~3)は、書く前のアクションなのです。
人によっては、まったく情報収集せずに書く人や、見たことも味わったこともないのに書く人もいますが、それでわかりやすい文章が書けるはずがありません。もちろん、そのテーマについて何の知識もない人の気持ちに寄り添えない人も、理解しにくい文章を書いてしまう予備軍です。
文章をわかりやすく書けない原因を「書き方」に求める人が少なくありません。もちろん、わかりやすく書く技術はあったほうがいいでしょう。
しかし、いくら書き方のスキルだけ磨いても、わかりやすい文章を書くことはできません。それは、食材がほとんどない状態で料理をつくったり、食べる人の好みを把握せずに料理をつくったりするようなものです。
- 情報を収集する
- 体験して理解する
- 読む人の気持ちに寄り添う
わかりやすい文章を書きたいなら、「書き方」に先んじて、この3つのプロセスへの意識を強めましょう。