『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

訴求力を高める「ベネフィット」の見つけ方・伝え方

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2021/11/04 12:08

(photo by Firmbee.com/Unsplash)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第45回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、商品・サービスのベネフィットを伝えるセールス文章について。

ベネフィットとは商品やサービスから得られる「恩恵」

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ホームページやECサイト、メールマガジン、LINE、SNSなどで何かしらのセールス文章を書くときには、「ベネフィット」による訴求を行いましょう。

ベネフィットというのは、商品やサービスの特徴ではありません。購入者が「その商品・サービスから受け取る利益や効果や効能、恩恵」のことです。平たく言うなら、購入者が受け取る“何かいいこと”です。

たとえば、企業向けのサービス「労働時間短縮プログラム」のセールス文章があったとします。あなたが、このサービスのターゲット(会社経営者)だった場合、以下のどの文章に惹かれますか。

【文章①】
この「労働時間短縮プログラム」はきちんと体系化されており、ステップ1から7まで、段階的に進めていただくことで成果が出やすくなります。内容には絶対の自信をもっています。

【文章②】
この「労働時間短縮プログラム」を導入することによって、社員一人あたりの月の残業時間を平均で15〜20時間短縮することができます。貴社の横浜支社の規模であれば、月に約150万円、年間約1800万円のコストダウンを実現できます。

【文章③】
弊社の企画開発部が総力をあげて開発したこの「労働時間短縮プログラム」が、今後、業界で注目を集めることは間違いありません。いち早く導入することをおすすめします。

おそらく、最も惹かれるのは②の文章ではないでしょうか。「社員一人あたりの月の残業時間を平均で15〜20時間短縮」「貴社の横浜支社の規模であれば、月に約150万円、年間約1800万円のコストダウンを実現」という具体的なベネフィット(=何かいいこと)が書かれているからです。

一方、①と③の文章は、会社経営者が前のめりになるベネフィットが盛り込まれていません。書かれていることは「サービスの大まかな特徴」や「自慢っぽい話」など、読む人の興味・関心からずれた話ばかりです。これでは読み手の購買意欲は高まりません。

ベネフィットを洗い出すと「潜在顧客」が見えてくる!

ダイエット系の商品・サービスのベネフィットは何なのか? 最もわかりやすいのは「痩せる」でしょう。「5か月で無理なく痩せる」「食事制限なしで痩せる」「リバウンドなしで健康的に痩せる」……広告などで、このようなベネフィットを見かけることは珍しくありません。

では、「痩せる」以外のベネフィットを考えていきましょう。

もしも、「痩せる」以外のベネフィットがまったく思い浮かばないとしたら、訴求力の高いセールス文章は書けないかもしれません。

【ダイエット系の商品・サービスのベネフィットの一例】
・かっこいいスーツが似合うようになる
・出産前に着ていた服が再び着られる
・腰やひざの痛みがやわらぐ
・メタボ健診の数値がよくなる
・生活習慣病が予防できる
・新陳代謝が高まり、免疫力が上がる
・自分に自信がつく
・疲れにくくなる
・集中力が高まる
・頭の回転がよくなる

このように、ダイエット系の商品・サービスによるベネフィットは「痩せる」以外にもさまざまあります。中には「いまは痩せる必要がないけど、生活習慣病の予防になるならいいね!」「集中力を高めて、頭の回転をよくしたい!」「免疫力アップにもつながるのか!」と、「痩せたい」以外のきっかけでサービスに申込む人もいるかもしれません。

一方で「痩せる」というベネフィットしか盛り込まれていないセールス文章の場合、潜在顧客を取りこぼしてしまう恐れがあるのです。

あなたが提供するサービスについても、さまざまなベネフィットを挙げてみましょう。ベネフィットを洗い出すときのコツは〈最もわかりやすい「ベネフィット」が手に入ることで、その人はどうなりますか?〉という質問の答えを考えることです。

ダイエット系サービスであれば、最もわかりやすい「ベネフィット」は「痩せる」です。そのほかのベネフィットを洗い出そうと思うなら「痩せると、その人はどうなりますか?」という質問に答えていけばいいのです(その答えが、先ほどリストアップした「ダイエット系の商品・サービスのベネフィットの一例」です)。

「機能的ベネフィット」と「情緒的ベネフィット」

厳密に言うと、ベネフィットには「機能的ベネフィット」と「情緒的ベネフィット」の2種類があります。「機能的ベネフィット」は、その商品やサービスを利用することで得られる機能面での“何かいいこと”です(長持ちする/シミが消える/試験に受かる/高血圧の数値が良くなる/稼げる等)。

一方、「情緒的ベネフィット」は、そのサービスを利用することで得られる感情面での恩恵のことです(癒やされる/優越感を得られる/安心感がある/自信がつく/心地よい/活力がみなぎる/幸せを感じる等)。

セールス文章を書くときには、事前に「機能的ベネフィット」と「情緒的ベネフィット」の両方を洗い出したうえで、商品・サービスのターゲットに響く言葉で訴求していきましょう。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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