人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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昇仙峡と弥三郎岳

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2021/09/13 10:03

長雨の合間をぬって甲府に行き、昇仙峡と羅漢寺山を訪れてみた。標高1058mだがロープウェイで一気に山頂近くまで登ることができる。山頂のパノラマ台駅の近くには富士山の見える展望箇所(この日は見えなかった)や、ちょっとした広場などがあり、ここまでは軽装でも問題ないことから、多くの人はここから景色を眺めて帰っていく。足元のよくない尾根道を5分ほど歩いたところには、せりだした岩の上の展望台があるが、ここまで来る人は少ない。

しかし、ここから尾根道を歩いていくと昇仙峡の壁のような崖、覚円峯の山の上に行くことができる。地理院地図では羅漢寺山とあったが、山頂駅の案内版では弥三郎岳と書いてあった。正式名称と地元での呼び名が違う、ということだろう。

この弥三郎というのは戦国時代の酒造りの名人の名前らしい。羅漢寺の弥三郎は、武田家の祝い酒などを造って重宝がられていたが、大の酒飲みで失敗が多く、その非を羅漢寺の住職にいさめられた。そこで、一斗の酒を最後に禁酒を誓い、飲んだ後この頂上から天狗になって消えてしまったという。そこから、ここが弥三郎岳と呼ばれるようになり、頂上の南側絶壁の岩穴には「弥三郎権現」祀られている。

山頂は鎖場で、手前の丸い岩の上は360度見渡せる絶景ポイント。ただし、岩の向こうは柵もない切り立った崖で、軽装で来るのは危険なため要注意。

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