日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2021/08/30 11:31
香川県高松市の郊外に、コミュニティバスの「城」というバス停がある。しかし、バス停の周囲を見渡してもとくに城のような建物はない。
バス停近くの道からゆるやかな坂を上ると奥に寺がみえる。実は、この眺望に優れた台地上にある称念寺は、讃岐の戦国大名だった十河氏の居城跡に建てられている。そして、称念寺から空堀のあとを越えたところが二の丸跡で、ここには十河一存、その養子の存保、存保の子・千松丸の十河氏三代の墓所がある。
墓所の手前には「十河歴史資料館」という小ぢんまりとした建物があった。たまたま居合わせた方がこの施設のオーナーで、中を案内していただいた。なんでも中に展示してあるのは私物で、建物も自力で建てたという。
十河氏は讃岐国山田郡蘇甲郷がルーツで、第12代景行天皇の子神櫛王の子孫と伝える古くから讃岐の土豪。この蘇甲がのちに「十河」に変化し、十河氏はそれを名乗っている。十河地名は現在は十川と変わり、称念寺の住所は「十川東町」である。地図上ではこの付近はすべて十川東町だが、小字として「城」という地名があるらしく、コミュニティバスのバス停として採用されたものだ。
バス停や公民館には、昔の小さな地名が残っていることが多い。