一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第42回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、夏休みの宿題を上手に書けるようになる秘訣について。
作文が苦手な原因は?
夏休みの手ごわい宿題といえば、作文。なかなか手が進まず、困ったり焦ったりしているお子さんも多いのではないでしょうか。そんな子どもに向かって「何をグズグズしているの! 早く書いちゃいなさい!」と怒鳴り声を上げても仕方ありません。おそらく本人も、書きたいけど書けなくて困っているのでしょう。
子どもの作文能力を飛躍的に伸ばす方法があります。それは「自問自答」です。自問自答とは、自分に質問をして、その質問に自分で答えることです。自問自答ができるようになると、その子どもの作文能力はグングン伸びていきます。
文章には「自問自答」が欠かせない
親御さんの中には、「作文を書くときに自問自答なんて必要だったっけ?」と首を傾げる人もいるでしょう。たしかに、学校教育で「作文を書くときは自問自答しましょう」と教わった人は少数かもしれません。
しかし、自覚していないだけで、作文を書くすべての人が自問自答をしています。このことに例外はありません。
今日はお友だちのかぞくといっしょにバーベキューをしました。
たとえば、子どもが、この文章を書いたとします。そのとき、子どもは「今日、わたしは何をした?」と自分に質問をしているのです。その質問に対して「お友だちのかぞくといっしょにバーベキューをした」と答えた。だから、この文章を書くことができたのです。本人が意識する・しないにかかわらず、文章の裏には、必ず自問自答があるのです。
バーベキューの作文をこってり書くなら?
たとえば、先ほどのバーベキューの文章も、以下のような自問自答をくり返すことで、作文の素材(=情報)をどんどん手元に集めていくことができます。
自問:バーベキューの何が楽しかった?
自答:炭に火をつけるのも楽しかったし、みんなでお肉を焼くのも楽しかった。
自問:一番おいしかった食べ物は?
自答:牛のカルビー! それと、デザートに焼いたマシュマロもおいしかった。
自問:何か困ったことや失敗したことはあった?
自答:トウモロコシを焼いているときに目を離してしまって、気がついたら、片側半分が真っ黒に焦げてしまった。
たった3回の自問自答で、興味深い素材が引き出されました。質問に答えたもの(=自答)は、すべて作文の素材です。このまま自問自答を続けていけば、さらに魅力的な作文になりそうな気がしませんか?
親子インタビューをしよう!
とはいえ、年齢にもよりますが、お子さんによっては「自問自答」がどういうものかわかっていない子もいるでしょう。そうなると「自問自答しなさい」とアドバイスしたところで、やり方がわからず、固まってしまうかもしれません。
そこで、親御さんの出番です。子どもの自問自答を手伝ってあげてください。オススメしたいのが「親子インタビュー」です。
たとえば、海水浴の思い出について作文を書く子どもには、以下のようなインタビューをしてみてください。
【子どもへの質問例】
・どこの海水浴場に行った?
・どんな海(浜)だった?
・海や浜で何をして遊んだ?
・何が一番楽しかった?
・何かおもしろいエピソードはあった?
・何か失敗したエピソードはあった?
・誰と一緒に行ったの?
・お昼やおやつは何を食べた?
・日焼けした?
・また海水浴に行きたい?
このように、さまざまな質問をしていきます。子どもは自分で質問を考えるのは苦手でも、親の質問には答えようとします。一つひとつの質問に答えていくことで、作文の材料がどんどん手元に集まります。親の質問に答えることで、作文の下書きをしている、とも言えます。
インタビューがのってきたら「深掘り質問」せよ!
質問に対して、子どもが楽しそうに答えたときや、たくさん話をしてくれたときはチャンスです。その話の中から、作文にするとおもしろくなりそうな事柄やエピソードを拾い上げて「深掘り質問」することで、さらに魅力的な素材を集めることができます。
料理と作文は、まったく同じです。食材がなければ料理は作れませんが、作文も材料がなければ作れません。「自問自答=材料集め」なのです。
親子インタビューをすることで、子どもは効率良く作文の材料を手にすることができます。すると、子ども自身の内側から「書きたい!」「書ける!」という気持ちが自然とわいてくるのです。そう、カギを握っているのは、子どもではなく、子どもの親や周囲にいる大人にほかなりません。作文で苦戦している子どもと一緒に親子インタビューを楽しみましょう。