人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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名字東西の境目

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2021/06/14 10:42

三重県内を流れる雲出川(photo by 蒲生喬/Adobe stock)

10日放送のNHK「日本人のおなまえ」で、名字の東西の境目について特集した。

日本海側では富山県と新潟県の間できっぱりと分かれ、その間には難所だった親不知があるためわかりやすい。しかし、太平洋側では古くから人の往来が盛んなため、こうしたきっぱりとした境目は存在しない。

県単位でみると東日本の名字である伊藤が圧倒的に多く、「2位:山本、3位:中村、4位:田中」が西日本、「5位:鈴木、6位:加藤、7位:小林」が東日本の名字と、東西混淆している。

番組では時間の制約もあって紹介しきれなかった市町村別の名字をみると次のようになっている。

県北部では伊藤が圧倒的に多く、加藤・小林も多い完全な東日本型の一方、今では大阪への通勤圏となっている西部の伊賀地区では、山本・田中が多い完全な西日本型。かつて紀伊藩領だった東紀伊地区や鳥羽地区も西日本型。さらに南勢地区も山本、中村の2つが圧倒的に多い西日本型である。残る中勢地区の津市では、伊藤(東日本)が最多で、2位が田中(西日本)。以下も東の鈴木と加藤、西の山口・山本・中村など東西の名字が混じっている。

そこで、平成大合併以前の旧市町村で調べてみると、津市北部の旧河芸町では後藤が最多で、伊藤も多い完全な東日本型。雲出川北側の旧久居市では1位が西の田中で、以下、鈴木(東)・伊藤(東)・山本(西)と東西の名字が混在している。

ところが、雲出川を渡った南側の旧一志町や旧白山町では、田中・山本が上位に並ぶ西日本型に変化しており、ここから雲出川の流域が東西の境目となっていると考えられる。

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