人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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牛のつく名字

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2021/01/05 11:57

(photo by 栂琢也/Adobe stock)

今年は丑年。そこで「丑」のつく名字をみてみたいが、残念ながら「丑」のつく名字は少ない。最も多い丑山でも全国ランキングでいえば1万位以下の稀少名字だ。では「牛」のつく名字ベストテンはというと、

1位:牛島
2位:牛田
3位:牛山
4位:牛尾
5位:牛丸
6位:牛嶋
7位:牛込
8位:牛木
9位:牛久保
10位:牛久

の順となっている。

江戸時代以前、馬が武士の乗り物とし重宝されたのに対し、牛は農耕に広く利用された。奈良時代に制定された『養老令』に、水田に耕牛を置くようにという規定が記載されているなど、稲作と牛は切り離すことのできないものだった。

平安時代には薬用としての乳牛を飼う他、「蘇」というチーズの一種まで作られていた。機械のない時代、牛は大きな労働力であり、農家にとってはなくてはならないものだった。

ところで、牛のつく名字のうち最多の牛島は九州北部、2位の牛田は愛知県、3位の牛山は長野県、4位の牛尾は関西、5位の牛丸は岐阜県に集中しているなど、「牛」のつく名字は中部以西に多くなっている。

実は、江戸時代までは牛の飼育は西日本が中心で、武士の多い関東では馬が一般的だった。名字から、こうした当時の牛と馬の地域による飼育状況の違いまで類推することができる。

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