『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

「五感を刺激する文章」を書く5つのテクニック

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2020/10/07 16:20

(photo by ハピネス/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第32回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、鮮やかにリアリティを伝える「五感」の書き方について。

人間のセンサー「五感」を武器に文章を書こう

この連載の一覧はこちら

何かしらの体験やエピソードを書くときには、五感を書くテクニックが有効です。五感を書くことによって、「映(ば)える」文章になりやすく、その場の情景や光景、様子、自身の体感などを、読む人にリアルに伝えることができます。

ご存知のとおり、五感とは、人間に備わっている代表的な感覚のこと。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の5つがあります。これらを文章で表現することで、より鮮明で臨場感のある文章ができ上がります。

視覚

五感のなかで、最も書きやすいのが視覚です。視覚とイメージは密接に結びついています。ただ「にんじん」と書くよりも、「夕陽を思わせる濃いオレンジ色のにんじん」と書くほうが、より鮮明な「絵」として伝わります。

もうすぐ破裂するのでは? と思うほどパンパンにふくらんだ財布。喜べないのは、その中身が「お金」の束ではなく、「レシート」の束だからだ。
・その黒光りしている岩山は、地面の裏側から突き刺したかのように鋭く尖っていた。ベテランのロッククライマーでも攻略は難しそうだ。

聴覚

聴覚を書くときは、オノマトペ(擬音語、擬声語、擬態語など)を用いるとリアリティが増します。「お腹がすいた」よりも、「お腹がグ〜と5秒ほど鳴った」と書くほうがイメージがわきます。なお、広い意味では、会話文も聴覚描写のひとつです。

・地平線が明るくなると、鳥たちが示し合わせたかのように、チュンチュンと鳴き始めた。自然界のリズムに脱帽だ。
ガチャっと重たい扉を開けて社長が入ってきた瞬間、会場にピリっと緊張感が走った。
・夫の「了解ではございません」という訳のわからない寝言を聞こえてきて、真夜中にもかかわらず、私は思わずプっと吹き出した

嗅覚

五感のなかでも、とりわけ「記憶」や「感情」に直結していると言われているのが嗅覚です。「匂いの描写→思い出」「匂いの描写→気持ち」の順で書くと効果が高まり、読む人の共感を誘いやすくなります。

・5年ぶりの実家。焼きたてパンの香ばしい匂いで目が覚める。一瞬、子どもの頃に戻った気がした。
・すれ違いざまに、レモンのようなさわやかな香りが漂ってきた。この子と話がしたい。僕はそう直感的に思った。

味覚

味覚の描写は「しょっぱい」「辛い」「すっぱい」「甘い」「苦い」「渋い」などの味表現をベースに、触感の描写(こしがある/とろける/サクサク等)や、温度の描写(ほくほく/キンキンに冷えた/ぬるい等)を交えることによって、“食”にまつわる文章のリアリティが高まります。

ライムの酸味と生ハムのしょっぱさが、口の中で絶妙のアンサンブルをくり広げた。ワインが進まないはずがない。
・カリっと硬めの歯ごたえと、存在感のある苦味。高カカオチョコレートは、やっぱりやめられない。
・その肉まんに食らいついた瞬間に、ジューシーな肉汁がじゅわ〜っと口の中にあふれ出した。

触感

触感とは、手触りや、肌触りといった、触った時の感覚のこと。皮膚の感覚だけでなく、広い意味では、頭、首、腕、お腹、お尻、腰、脚など、からだの全体、または一部で感じたことを表現します。

シルクのようにやわらかく、すべすべした素肌だ。
・お鍋を触った手のひらが、その熱さに耐えきれず、思わず「あちっ!」と声を上げてしまった
・35キロを過ぎると、鉛でも入れられたかのように脚が重くなり、ついには我慢できず、歩き始めてしまった。

「神は細部に宿る」という格言は、文章作成にも適用できます。「五感描写=細部描写」です。五感を上手に捉えられるようになると、文章表現の“幅”と“可能性”が一気に広がります。ふだんから五感を意識しながら表現するクセをつけましょう。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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