『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

ダチョウ倶楽部に学ぶ「つかみ文章術」

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2020/04/01 16:48

(photo by TomoharuPhotography/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第26回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、一瞬で読む人のハートをつかむ「つかみの書き方」について。

笑いも文章も「つかみ」が9割?

この連載の一覧はこちら

「つかみはOK」といえば、ダチョウ倶楽部の人気ネタのひとつです。「つかみ」とは導入部分のことで、お笑い芸人にとって「つかみ」で笑いを取れるかどうかは極めて重要です。導入部でお客さんのハートをつかむことができれば、笑いが生まれやすくなり、反対にハートをつかみ損ねてしまうと、その後は苦戦を強いられます。

「つかみ」の重要性は、お笑い芸人に限ったことではありません。小説、劇や映画の脚本、スピーチ、プレゼンテーションなど、あらゆることに通じます。もちろん、文章作成にも同じことがいえます。

たとえば、次の2つの文を見比べてみてください。

【例文1】
人の興味を引く自己紹介の方法についてお伝えします。
自己紹介が苦手な方は、どうぞ最後までお読みください。
実は、自己紹介で最も大事なのは「第一声」です。

【例文2】
ずばり、あなたの自己紹介は、人に興味をもたれていません。
少しどころか、まったく興味をもたれていない可能性も“大”です。
実は、自己紹介で最も大事なのは「第一声」です

例文1と例文2の書き出し(1、2行目)を読み比べたとき、どちらが、続きの文章を読みたくなりますか? おそらく、ドキっとさせられた例文2ではないでしょうか。例文1は良くも悪くも平凡です。両者の差が「つかみ」の差です。

その続きにどれだけ有益な内容が書かれていても、「つかみ(=書き出し)」の吸引力が弱ければ、読む人はそこで読むのをやめてしまいます。最後まで文章を読んでもらいたなら、徹底して「つかみ」にこだわり、その吸引力を高める必要があります。

「つかみ」の役割は、読む人の感情を動かすこと

もうひとつ例文をご紹介します。

【例文3】
スマホ利用者が増えています。彼らは朝から晩まで、四六時中スマホを利用しています。

【例文4】
スマホの奴隷になる人が急増しています。彼らは朝から晩まで、四六時中スマホに人生を支配されています。

例文3と例文4の書き出しを読んだとき、続きの文章を読みたくなったのは例文4ではないでしょうか。極めて平凡な書き出しの例文3に対して、例文4では「スマホの奴隷が急増しています」や「四六時中スマホに人生を支配されています」という強い言葉が使われています。思わずドキっとした人、ゾっとした人、あるいは「わたしはスマホの奴隷なんかじゃない!」と、反発したくなった人もいるでしょう。

いずれにせよ、例文4の書き出しを読んだ人は、「この筆者は、どうしてこんなことを言うのだろうか?」と、その理由が気になり、続きを読み進めてしまうのです。例文3と例文4の差も、先ほどと同様に「つかみ」にあります。

「つかみ」の成否は、読者の反応次第

以下は、文章の「書き出し」を読んだときの読者の反応例です。このような反応が得られているようなら、おおむね「つかみはOK」といえるでしょう。続きの文章を読んでもらえる可能性が高まります。

へえ!/スゴい!/なにそれ?/ホント?/いいね!/ドキドキする!/ワクワクする!/おもしろい!/えー!(驚き)/怖い!/気になる!/自分に関係ある話だ!/役立ちそうだ!/新鮮!/ゾっとする!/笑える!/なんだと!

ご覧のとおり、すべての反応に「!」や「?」が付いています。つまり、感情が大きく動いている証拠です。

人は「感情の生き物」です。感情が動くと興味がわきやすくなります。つまり、文章の書き出しでは、よくも悪くも、読む人に「!」や「?」で反応してもらう必要があるのです。

人間の「欲」を刺激すると「!」や「?」が生まれる?

では、どうしたら、読む人に「!」や「?」で反応してもらうことができるのでしょうか? そのアプローチがよくわからないという人は、人間の「欲」について知っておくといいでしょう。以下は、人間がもっているさまざまな「欲」の一例です。

得したい/損したくない/知りたい/体験したい/成長したい/不満・不安・ストレスを解消したい/痛み・悩みから開放されたい/安定したい/便利になりたい/気持ちよくなりたい/自信を持ちたい/時間をかけたくない/ムダを省きたい/お金が欲しい/○○(モノや人)が欲しい/○○(技術など)を高めたい/○○の結果を出したい/効率をよくしたい/カッコつけたい/努力したくない(ラクしたい)/〇〇に縛られたくない/自由でいたい/安心したい/評価されたい/賞賛されたい/優越感に浸りたい/人によく見られたい/仲間になりたい/刺激が欲しい/懐かしさを感じたい/若返りたい・美しくいたい/癒やされたい/モテたい/愛されたい/SEXがしたい

このように人間にはさまざまな「欲」があります。どの「欲」が強いか(弱いか)は人によって異なります。成長欲求が強い人もいれば、承認欲求(人から「褒められたい」「認められたい」と思う欲求)が強い人、物欲や金欲が強い人もいます。大事なことは、自分の文章を読む人が、どういう「欲」を強くもっているかです。強い「欲」が刺激されると、人の感情は大きく動かされます。

【例文2】
ずばり、あなたの自己紹介は、人に興味をもたれていません。

例文2の「書き出し」にドキっとした人は、「損したくない」「○○の結果を出したい」「カッコつけたい」「評価されたい」「賞賛されたい」「優越感に浸りたい」「人によく見られたい」などの「欲」を刺激されたのかもしれません。

【例文4】
スマホの奴隷になる人が急増しています。

例文4の「書き出し」にドキっとした人は、「不安を解消したい」「ムダを省きたい」「効率をよくしたい」「○○に縛られたくない」「自由でいたい」などの「欲」を刺激されたのかもしれません。

もちろん、情報伝達を目的とする実務文の「書き出し」で、読む人の興味を引く必要はありません。一方で、人の心を動かす必要や、共感を誘う必要があるときには、「書き出し」に工夫を凝らしましょう。「つかみ」を制するものは文章を制します。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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