アナウンサー・渡辺由佳が解説「こんなときどう言う?」

「私の言うことって、どうしてうまく伝わらないのだろう」
「あのとき言ったことで、なぜムッとされたのだろう」
言葉は、自分が思っていた通りに受け取られないもの。「それを適切に言い換えるとすれば?」というテーマで好評を博したコラムがリニューアル!

職場に限らず、日常会話でもよくある「こんなときどう言えばいい?」という疑問の答えを、テレビ朝日を退社後、フリーアナウンサーや話し方講座の講師として活躍する渡辺由佳氏が解説します!
(毎月第2・4水曜日更新予定)

著者プロフィール

渡辺由佳(わたなべ・ゆか)

1964年、東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業。テレビ朝日にアナウンサーとして入社。報道から社会情報番組まで多数の人気番組を担当。1993年に独立。以後、フリーアナウンサー、話し方講師としての活動を始め、テレビ朝日アナウンサースクールやシェリロゼ(自分磨きスクール)で指導を行なうほか、「ビジネスマナー」「コミュニケーション」「ビジネスメール」をテーマに企業向けのセミナー講師も務める。2016年より大妻女子大学文学部非常勤講師を務める。

著書に、『会話力の基本』(日本実業出版社)、『スラスラ話せる敬語入門』『サクサク書けるビジネスメール入門』(以上、かんき出版)、『気の利いた「ひと言」辞典』(講談社)などがある。

ブログ:渡辺由佳の素敵なことば探し
http://ameblo.jp/sutekinakotoba/

新入社員と上手くコミュニケーションを取るためには?

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2020/03/18 11:10

(photo by taka/Adobe stock)

この記事のポイント

「20代の先輩社員→新卒」は同期との関係性に対する気遣いや、仕事から離れた内容(趣味など)について。「30~40代→新卒」はちょっとした仕事ぶりや、気にかけていることを念頭に話すのがベター。でも、一番大事なのは「あなたに興味を持っている」という気持ちを込めて声をかけること。

間もなく新しい年度が始まりますが、今年は新型コロナウイルスの感染を防ぐため、入社式や集団研修を延期したり、中止したりする企業が増えています。そのため「新入社員研修を完全にOJT(On-The-Job Training)のみに切り替える」という企業も増加すると思われます。

OJTでは、数名の新入社員に対して各部署から担当者を割り振り「仕事のイロハ」を教えることになるので、担当者の負担も大きくなります。なかでも悩ましいのが「世代ギャップを埋めるコミュニケーションの取り方」ではないでしょうか。

最近の新入社員は「SNSで自分の思いを発信するのは得意ですが、面と向かってコミュニケーションを取るのは苦手という人が多い」という傾向があります。SNSではいくらでも会話が続くのに、なかなか面と向かっての会話が続かない、そんな彼ら・彼女らと円滑にコミュニケーションを取っていく方法を

  1. 20代の社員
  2. 30~40代の社員

この2つの世代に分けて考えてみたいと思います。

実は、私の息子が昨年の4月に新入社員としての生活をスタートさせ、早いもので1年になろうとしています。ですので、今回は「入社して間もないころ、どんな言葉をかけてもらったら話がしやすかったのか」「その人との心の距離が縮まったと感じた言葉はなにか」など、生の声をもとにお伝えしたいと思います。

20代社員からの言葉

まず、20代の社員からかけてもらった言葉で印象に残っているのは

「同期のみんなと仲良くやってる?」
「何か趣味はあるの?」
などだそうです。

年齢が比較的近い社員から「同期のみんなと仲良くやってる?」と声をかけてもらえると、親身になって心配してくれていることがわかって、すごく嬉しかったそうです。仕事に慣れるのも大切ですが、同期の仲間同士、心を開いていれば、そのあとどんな大変なことも、一緒に乗り越えて行けます。そこがまず上手く行っているかどうかを心配してもらったことで、その先輩に心を開くきっかけになったそうです。

また、「何か趣味はあるの?」という言葉をかけてもらうと、自分の好きな分野の話ができるのでとても会話が弾んだと話していました。息子が好きなゲームの話をすると、ゲームが好きな先輩も多く、この話題で大いに盛り上がったと言います。

また、サッカーや野球など、スポーツが好きな新入社員だったら、どんなポジションをやっていたのか、好きなプロチームはどこなのかなど、いくらでも会話は広がるでしょう。社内で会った時も「最近、サッカーやってる?」など、会話のきっかけにもなります。

年次の近い先輩としての声のかけ方は、このように仕事の話から少し離れたところに会話を弾ませるチャンスがありそうです

30~40代社員からの言葉

少し年次が離れた30~40代の先輩・上司となると、年齢が離れているだけに何と声をかけるか難しいところですが、息子によると上司から声をかけてもらって嬉しかったのは「朝礼時のちょっとした発表について『この間の発表良かったよ!』というひと言だった」ということでした。自分の仕事ぶりをしっかり見て、記憶にとどめていてくれたことが嬉しかったそうです。

少し年齢が離れた上司からは、やはり仕事についてほめてもらうことがモチベーションのアップにもつながります。ですので、新入社員たちの仕事ぶりを良く見ていて、ほめられるところが見つかったら、すぐに声をかけてあげましょう。そこをきっかけに、「最近、調子はどう?」「何か相談があったら、いつでも来てくれるといいよ」とより良いコミュニケーションに発展していくことでしょう。

一方、「いつも君の存在を気にかけているよ!」というコミュニケーションの取り方もあります。とにかく、まめに声をかけ続けるという方法です。

息子の上司の一人に、社内で息子を見つけると、「おはよう! 最近どう?」といつも声をかけてくれる上司がいるそうです。多くの社員の中で、いつも息子のことを見つけて声をかけてくれるので、いつの間にか息子もその上司のことを目で探すようになったということです。

いつも自分の存在を気にかけてくれる人が社内にいるということは、新入社員にとっても大きな支えとなることでしょう。息子もいつもその上司に見守られているような気持ちになったそうです。

たとえ、いつも同じような言葉をかけていたとしても、声をかけ続けることで、心の距離を縮めることができるのです。

世代別にコミュニケーションの取り方をご紹介しましたが、あまり縛られずに思ったことをどんどん言葉にして伝えてみることもお勧めします。

「そのお弁当、美味しそうだね」
「どこから通ってるの?」
など、何でもいいと思います。

「おはようございます!」「お疲れ様でした!」だけでは、会話は広がりません。挨拶の言葉に何かひとことを添えることで、「あなたに興味を持っているんですよ!」という気持ちが伝わります。自分に興味を持ってくれる人が存在するだけでも、新入社員は自分の居場所が生まれます

ぜひ、どんどん声をかけて、新入社員との心の距離を縮めてください。

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