『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

誤読を生まない「修飾語」「被修飾語」の並べ方

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2020/03/04 16:09

(photo by newgin/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第25回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、並べ方を間違えると誤読をうむ「修飾語」「被修飾語」について。

読む人の誤読を招く「悪文」の原因とは?

この連載の一覧はこちら

あなたが書く文章の修飾語と被修飾語は離れすぎていませんか? 修飾語と被修飾語が離れすぎていると、意味の結びつきがわかりにくくなり、誤解や誤読を招きやすくなります。文章を書くときには、読む人の理解度が低下しないよう、修飾語と被修飾語の配置を適正化しましょう。

【例文1】
無責任な主任の発言
【例文2】
主任の無責任な発言

例文1と2では「無責任な」という言葉の“かかり先”が違います。例文1は「主任」と「発言」のどちらにかかっているかがよくわかりません。一方、例文2の「無責任な」は、明らかに「発言」にかかっています。

もしも、主任がたまたま無責任な発言をしただけなら(いつもは責任ある発言をしているなら)、例文1の書き方では誤解が生じます。「主任=無責任な人」と読めてしまうからです。正確に伝えるためには、例文2のように「無責任な」が「発言」以外にかからない並び順にする必要があります。

「修飾語」と「被修飾語」の配置原則とは?

別の例文をご紹介します。

【例文3】
新しい若手社員向けのA社で開発された研修です。

意味がわかりそうでわからない。フラストレーションを感じる文章ではないでしょうか。どうやら書き手は、以下1〜3のように「研修です」に3つの言葉をかけたかったようです。

1.新しい→研修(=新しい研修)
2.若手社員向けの→研修(=若手社員向けの研修)
3.A社で開発された→研修(=A社で開発された研修)

しかし、例文3の書き方では、そうは読めません。「新しい」が「若手社員」にかかっているように見えます。同様に「若手社員向けの」が「A社」にかかっているように見えます。

修飾語と被修飾語の関係がわかりにくくなったときは、言葉の“かかり先”を明確にしたうえで、以下の原則をあてはめます。

原則1:「<節>を含む修飾語→<句>の修飾語」の順に並べる
原則2:「長い修飾語→短い修飾語」の順に並べる

<節>とは1個以上の述語を含む複文のことで、<句>とは述語を含まない文節(文の最小単位)のことです。

原則1と2に従って、例文3を並べ替えてみます。

【例文3の修正文】
A社で開発された若手社員向けの新しい研修です。

「A社で開発された」が<節>にあたるため、文頭に配置し、そのうえで、修飾語が「長い→短い」の順で、「若手社員向けの→新しい」と並べました。

不自然さが消える形で文章を最適化する

もっとも、原則はあくまでも原則です。最優先すべきは「意味の結びつき」です。原則どおりに並べても、(修飾語がほかの言葉にかかっているように見えるなど)読む人の誤解を招きそうなときは、改善しなければいけません。

同じ言葉にかかる修飾語が複数あるときは、以下の手順で、修飾語と被修飾語の最適化を図りましょう。

1.原則どおりに並べる
2.前後の言葉との“意味の結びつき”を確認する
3.誤読されそうな要素があれば、原則を無視して文章を再構成する

実は、先ほどの「例文3の修正文」も、ものすごく読みやすいかといえば、そうともいえません。「A社で開発された」が「若手社員」にかかっているようにも見えるからです。

もちろん「A社で開発された若手社員」という言葉が不自然なため、読む人の多くが、「A社で開発された」の“かかり先”が「研修」であると判断するでしょう。しかし、読む人に一瞬でも不自然さを感じさせてしまった時点でアウト。何かしらの工夫を凝らして、不自然さを消す必要があります。

【例文3の修正文】
A社で開発された若手社員向けの新しい研修です。

【例文3の修正文をさらに修正】
A社で開発された、若手社員向けの新しい研修です。

「A社で開発された」と「若手社員向けの」の間に読点(、)を打つことにより誤読のリスクを減らしました。

ほかにも、文章を解体・分割する方法があります。

【例文3の修正文】
A社で開発された若手社員向けの新しい研修です。

【例文3の修正文をさらに修正】
若手社員向けの新しい研修です。この研修はA社が開発しました。

このように、文章を分割することで、誤解や誤読を回避できるケースも少なくありません。「修飾語を並べ替える」や「読点を打つ」という処置とあわせて検討しましょう。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

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