一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第25回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、並べ方を間違えると誤読をうむ「修飾語」「被修飾語」について。
読む人の誤読を招く「悪文」の原因とは?
あなたが書く文章の修飾語と被修飾語は離れすぎていませんか? 修飾語と被修飾語が離れすぎていると、意味の結びつきがわかりにくくなり、誤解や誤読を招きやすくなります。文章を書くときには、読む人の理解度が低下しないよう、修飾語と被修飾語の配置を適正化しましょう。
【例文1】
無責任な主任の発言
【例文2】
主任の無責任な発言
例文1と2では「無責任な」という言葉の“かかり先”が違います。例文1は「主任」と「発言」のどちらにかかっているかがよくわかりません。一方、例文2の「無責任な」は、明らかに「発言」にかかっています。
もしも、主任がたまたま無責任な発言をしただけなら(いつもは責任ある発言をしているなら)、例文1の書き方では誤解が生じます。「主任=無責任な人」と読めてしまうからです。正確に伝えるためには、例文2のように「無責任な」が「発言」以外にかからない並び順にする必要があります。
「修飾語」と「被修飾語」の配置原則とは?
別の例文をご紹介します。
【例文3】
新しい若手社員向けのA社で開発された研修です。
意味がわかりそうでわからない。フラストレーションを感じる文章ではないでしょうか。どうやら書き手は、以下1〜3のように「研修です」に3つの言葉をかけたかったようです。
1.新しい→研修(=新しい研修)
2.若手社員向けの→研修(=若手社員向けの研修)
3.A社で開発された→研修(=A社で開発された研修)
しかし、例文3の書き方では、そうは読めません。「新しい」が「若手社員」にかかっているように見えます。同様に「若手社員向けの」が「A社」にかかっているように見えます。
修飾語と被修飾語の関係がわかりにくくなったときは、言葉の“かかり先”を明確にしたうえで、以下の原則をあてはめます。
原則1:「<節>を含む修飾語→<句>の修飾語」の順に並べる
原則2:「長い修飾語→短い修飾語」の順に並べる
<節>とは1個以上の述語を含む複文のことで、<句>とは述語を含まない文節(文の最小単位)のことです。
原則1と2に従って、例文3を並べ替えてみます。
【例文3の修正文】
A社で開発された若手社員向けの新しい研修です。
「A社で開発された」が<節>にあたるため、文頭に配置し、そのうえで、修飾語が「長い→短い」の順で、「若手社員向けの→新しい」と並べました。
不自然さが消える形で文章を最適化する
もっとも、原則はあくまでも原則です。最優先すべきは「意味の結びつき」です。原則どおりに並べても、(修飾語がほかの言葉にかかっているように見えるなど)読む人の誤解を招きそうなときは、改善しなければいけません。
同じ言葉にかかる修飾語が複数あるときは、以下の手順で、修飾語と被修飾語の最適化を図りましょう。
1.原則どおりに並べる
2.前後の言葉との“意味の結びつき”を確認する
3.誤読されそうな要素があれば、原則を無視して文章を再構成する
実は、先ほどの「例文3の修正文」も、ものすごく読みやすいかといえば、そうともいえません。「A社で開発された」が「若手社員」にかかっているようにも見えるからです。
もちろん「A社で開発された若手社員」という言葉が不自然なため、読む人の多くが、「A社で開発された」の“かかり先”が「研修」であると判断するでしょう。しかし、読む人に一瞬でも不自然さを感じさせてしまった時点でアウト。何かしらの工夫を凝らして、不自然さを消す必要があります。
【例文3の修正文】
A社で開発された若手社員向けの新しい研修です。
↓
【例文3の修正文をさらに修正】
A社で開発された、若手社員向けの新しい研修です。
「A社で開発された」と「若手社員向けの」の間に読点(、)を打つことにより誤読のリスクを減らしました。
ほかにも、文章を解体・分割する方法があります。
【例文3の修正文】
A社で開発された若手社員向けの新しい研修です。
↓
【例文3の修正文をさらに修正】
若手社員向けの新しい研修です。この研修はA社が開発しました。
このように、文章を分割することで、誤解や誤読を回避できるケースも少なくありません。「修飾語を並べ替える」や「読点を打つ」という処置とあわせて検討しましょう。