『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

伝え上手はやっている「噛み砕き文章術」

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2020/02/05 16:06

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第24回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、使ってしまいがちな抽象的な表現やビジネス用語について。

「あいまいな言葉」で終わらせていませんか?

この連載の一覧はこちら

言葉を噛み砕く――文章力を磨きたいなら、この能力を伸ばす必要があります。なぜなら言葉の多くは「抽象」、つまり噛み砕かれていない“あいまいなもの”だからです。

健康、信頼、成功、本気、愛、友情、人生、夢、知恵、努力、責任、癒やし、喜び、優しさ、喜び、ビジョン……などなど。

思いつくままにピックアップしたこれらの言葉の意味を10人に書かせたら、十人十色の解説を読むことができるでしょう。言葉は“共通認識”のうえに成り立っていると思われがちですが、実状は少しだけ違います。言葉の多くは“自己解釈”のうえに成り立っているのです。

たとえば「責任を取る」という文章の意味。Aさんにとっては「頭を下げること」、Bさんにとっては「職を辞すること」、Cさんにとっては「お金を払うこと」――というケースは、世の中に山ほどあります。

「幸せ」という言葉はどうでしょう。残念ながら「幸せ」単体では、書き手が思っている意味を伝え切ることはできません。書き手が思っている「幸せ」と、読み手が思っている「幸せ」は一緒ではないからです。

幸せとは「不自由のないお金があること」と書く人もいれば「大切な人と一緒に過ごすこと」「自分が好きなことに打ち込んでいること」と書く人もいます。だから、あなたが「幸せ」について具体的に書いたときに初めて「あなたが思う幸せの意味」が読む人に伝わるのです。

「信頼できる会社」って、どんな会社?

もう少し具体的な例を挙げながら「定義があいまいな言葉」のかみ砕き方を見ていきましょう。

信頼できる会社に転職したい。

「信頼できる会社」とはどういう意味でしょうか? このままではあいまいではっきりしません。読む人が受ける印象もまちまち、一人ひとりが好き勝手に「信頼できる会社」の意味を自己解釈しているはずです。ですので、書き手の真意を伝えるためには、「信頼できる会社」の言葉をかみ砕く必要があります。

1.福利厚生が手厚い会社
2.顧客から慕われている会社
3.創業20年以上の会社
4.社会的な知名度が高い会社

5.直近5年間の経営が黒字の会社
6.実績のある企業と取り引きしている会社

7.ロングセラー商品をもっている会社

1〜7は、すべて私が考える“信頼できる会社”をかみ砕いたものです。いずれも「信頼できる」の意味を掘り下げているため、より具体的に伝わってきます。

もちろん、1の「福利厚生が手厚い」や2の「顧客から慕われている」、4の「知名度の高い」なども、あいまいといえばあいまいです。どれくらい手厚いの? どんなふうに慕われているの? どれくらい社会的な知名度が高ければいいの? キリがありません。

どこまでかみ砕くかの線引きは、文章の目的や、文章を読む人の認識レベルを勘案して、書き手自身が判断しなければいけません。

スマートなビジネス用語や専門用語に注意!

ビジネスシーンでは、ビジネス用語や専門用語が頻繁に用いられています。これらの言葉は、ときに効率のよい伝達を実現します。しかし、もしも読む人が、それらの言葉の意味を認識していなかったとしたらどうでしょう。たちまち、書き手の真意は伝わらなくなります。

1.次回のマイナーチェンジでは、ドラスティックな仕様変更を行います。
2.次回のマイナーチェンジでは、根本的な仕様変更を行います。 


1の「ドラスティック」をかみ砕いたのが2です。「ドラスティック」の意味を知らない人や勘違いしている人には、1は理解されません。誤解を招いてしまう恐れもあります。

ソリューション、アサイン、イシュー、コモディティ、フェーズ、エビデンス、マター、アントレプレナー、ドラスティック、シナジー、オーソライズ、バッファ、プライオリティ、オルタナティブ……など、ビジネスシーンでは専門用語やビジネス用語がたくさん使われています。

これらの用語は、はたして読む人に理解されているのでしょうか? つまり、共通認識に基いて使われているのかどうか? もしも共通認識がないとしたら、言い換えを考えなければいけません。

ちなみに「コンシューマー」と「カスタマー」の違いをご存知でしょうか。ざっくり言えば、コンシューマーは不特定多数の「消費者」で、カスタマーは「顧客/お得意さま」です。つまり、コンシューマーやカスタマーという言葉を使いたいなら、「読む人がその言葉の定義を知っている」という確証がなければいけないのです。

「コミットメント」で伝わっていますか?

ビジネスシーンで使われることの多い「コミットメント」という言葉。その意味は多様にありますが、すべての意味を完璧に理解している人は少ないはずです。 

【「コミットメント」の使用例1】
3週間で5件の契約を獲得する。これがわたしのコミットメントだ。
【かみ砕いて修正】
3週間で5件の契約を獲得する。これがわたしの公約だ。

【「コミットメント」の使用例2】
すでに150ロール注文のコミットメントをいただいています。
【かみ砕いて修正】
すでに150ロール注文の確約をいただいています。

【「コミットメント」の使用例3】
当団体は、過疎地域へのコミットメントを模索していきます。
【かみ砕いて修正】
当団体は、過疎地域への深いかかわり合いを模索していきます。

「コミットメント」の意味を知らない人でも「かみ砕いて修正した文章」のほうであれば、ムリなく理解できるのではないでしょうか。

文章を書くときに、読む人との「共通認識」の有無を意識できる人は、わかりやすい文章を書ける資質のある人です。「共通認識」が“ない”または“ないかもしれない”と判断したときは、誤解を招かないように言葉を噛み砕きながら文章作成していきましょう。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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