一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第23回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、仕事の生産性や効率アップにつながる「メモ」について。
文章がうまい人ほどメモをよく取る?
文章力のある人ほど、ふだんから積極的にメモを取っています。会議中はもちろん、上司から言われたこと、取引先やお客様から聞いた話、仕事中に気づいたこと、ふとした瞬間に思い浮かんだアイデア、読書中の気づき……などなど。なぜ積極的にメモを取ると、文章力が伸びるのでしょうか? メモを取ることで得られる5つの効果をご紹介します。
■メモの効果1:備忘効果
人間は、経験したことや覚えたことでも、放っておくと次第に忘れていってしまう生き物です。「これは覚えておこう」と強く意識したいことを忘れてしまうことも珍しくありません。メモには「備忘効果」があり、極端なことをいうと、メモさえ取っておけばそのことを忘れても構いません。いざというときは、メモを読み返せばOK。場合によっては、数ヶ月~数年前に取ったメモが文章作成に役立てられるケースもあります。メモは貴重な「情報の備蓄庫」です。文章がうまい人ほど適宜メモから必要な情報を引き出しています。
■メモの効果2:下書き効果
メモは、本番の下書きとしてそのまま使えます。メモを取らず、いきなり本番の文章を書き始めるよりも「下書き→本番」の流れで書くほうが、内容が吟味・熟成されて、文章のクオリティが高まります。メモを取るときのコツは「できる限り具体的に書く」です。「クセのあるチョコ」とメモするよりも「カカオの苦味が口に残る強力ビターテイストのチョコ」とメモしたほうが、下書き効果は高まります。
■メモの効果3:記憶効果
メモを取ることによって、記憶に刻まれやすくなります。インプットした情報を言語を使ってアウトプットするプロセスを踏むことで、その情報への認識が強まるからです。加えて、取ったメモを読み返す機会を増やす(=情報への接触頻度を高める)ことができれば、記憶の定着率はより高まります。もちろん「記憶された情報=文章の素材」です。その量が多いほど、文章を書くときの作業はラクになります。
■メモの効果4:気づき効果
メモしている最中や、書き留めたメモを読み返していると、人はいろいろなことに気づきます。たとえば、新聞や雑誌、ネットニュースなどで見かけた食べ物を書き出したとします。梅干し、レモン、パイナップル、ピクルス――このラインアップを並べて眺めたときに「もしかしたら、いま世の中では酸っぱい食べ物が流行っているのかも?」と気づくケースです。このように視覚化(文字化)することで初めて「気づく」ことは珍しくありません。あるいは、自分の考えや感情なども、書き出してみて初めて「気づく」ことがあります。
■メモの効果5:アイデア創出効果
「気づき」の先には「アイデアの創出」もあります。たとえば「1000円ヘアカットは忙しいビジネスパーソンの味方」と書いたメモと、別の日に書いた「コンビニサービスの多様化加速」というメモを見比べたときに「もしかしたらコンビニ内に1000円ヘアカットを設置することも可能なのでは?」というアイデアが生まれるケースです。
メモを眺めながら、まったく関係のない情報同士の共通点や相違点を探したりすることによってアイデアが生まれやすくなります。もちろん、そうしたアイデアを文章に盛り込めば、読む人に興味や関心をもってもらいやすくなります。
文章力にとどまらず、ビジネスパーソンとしての能力がアップ!
クオリティの高い文章を書く人ほど、自分で見聞きした事柄や、突如浮かんだひらめき、人から聞いた話、上司や先輩から受けた指示や教え、日々の気づきなどをノートや手帳にこまめに書き留めています。また、メモしたそれらをよく見直して、仕事全般に活用しています。ビジネスパーソンとしての能力に磨きをかけたい人は、積極的にメモを取るようにしましょう。
「備忘効果」「下書き効果」「記憶効果」「気づき効果」「アイデア創出効果」という5つの効果が、あなたの仕事の効率と生産性を高めてくれるはずです。