一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第21回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、グッとリアリティが増す「数字の使い方」について。
多くの人が自殺? 約25分26秒に1人のペースで自殺?
読む人が納得する文章には、しばしば数字が使われています。数字を使うと、読む人の頭に具体的なイメージが浮かび上がりやすくなります。また、その数字を“どう使うか”によっても、文章の説得力や、読む人に与える印象が大きく変わります。
1. 日本では、1年間にかなりの人が自殺しています。
2. 日本では、1年間に2万840人が自殺しています。
1と2は同じ状況について書いた文章ですが、多くの人が1よりも2の文章に説得力を感じることでしょう。1の「かなりの人」という表現が漠然としすぎているのに対して、2の「1年間に2万840人」は具体的で、その多さがリアルにイメージできるからです。
しかし「1年間に約2万840人が自殺しています」という書き方がベストかといえば、そうとも言い切れません。たとえば、以下のような書き方はどうでしょう。
3. 日本では、1日に約57人が自殺しています。
おそらく、1年単位で伝えた2よりも、1日単位で伝えた3の文章のほうが、自殺者数の現実を実感できるのではないでしょうか。
4.日本では、約25分26秒に1人のペースで自殺が発生しています。
さらに工夫を凝らせば、4のような書き方もできます。「えっ、そんなに多いの?」と、改めてその数字が示す“問題の深刻さ”に気づく人もいるでしょう。もちろん、数字を使うかどうか(あるいは数字を“どう使うか”)は、その文章の目的に応じて決める必要があります。
具体的な数字やパーセンテージで示す 1:アンケート調査の結果報告
別の例文を見てみましょう。
1. 30代の女性200名にアンケート調査を実施したところ、多くの人に美白効果が認められました。
「多くの人」と言われても、さっぱりわかりません。半数を超えたら「多い」と思う人もいれば、7割、8割以上でなければ「多い」とは思わない人もいます。「多い」に対する認識が共通でない以上、データとしては使えません。
2. 30代の女性200名にアンケート調査を実施したところ、160人に美白効果が認められました。
「160人」と具体的に人数を示した2のほうが、1よりも説得力のある文章です。あるいは、次のような表現もできます。
3. 30代の女性200名にアンケート調査を実施したところ、その80%に美白効果が認められました。
人数ではなく、パーセンテージ(%)を用いました。「人数で示すのとパーセンテージで示すのでは、どちらが文章の目的を達成しやすいだろうか? 」そこまで考えることができたら及第点です。
具体的な数字やパーセンテージで示す 2:店舗の売り上げ増加の報告
もうひとつ例を見てみましょう。
1. 当店では前年よりもすばらしい売り上げを達成しました。
「すばらしい売り上げ」と言われても、どれくらいなのかが想像できず、読む人に不親切な文章です。あいまいな書き方ばかりしていると、“仕事がデキない人”“仕事ぶりがずさん”“人を煙に巻いている”などと思われて、信頼を落とす恐れもあります。
2.当店では前年比200%の売り上げを達成しました。
1よりは親切な文章です。「前年比200%」ということは、前年の倍の売り上げがあったということです。読む人に与えるインパクトも小さくありません。
一方で、「前年比200%」がものすごく具体的かといえば、そうともいえません。売り上げが「150万円→300万円」と「1500万円→3000万円」と「1億5000万円→3億円」では、規模が大きく違います。パーセンテージを用いた2の文章では、残念ながらその規模を推し量ることができません。
3.当店では前年比200%(1500万円→3000万円)の売り上げを達成しました。
規模までしっかりと伝える必要があるなら、3のようにパーセンテージに加えて、実際の金額も具体的に数字で示したほうがいいでしょう。
数字を使った文章で、仕事の生産性を高めよう
なお、数字で語れるデータは、プレゼン資料やセールス文章の「信憑性」や「信頼性」を高める役割も担っています。具体的な数字で示すことで「ほう、それはすごい!」と、納得感や安心感を強める人もいます。
【納得感や安心感を高める数字の使い方例】
1. 30代の主婦80名に1ヶ月間使用していただいたところ、「期待以上にダイエットできた」が66%、「ほぼ期待通りにダイエットできた」が22%、「期待通りではなかったがダイエットできた」が9%と、実に97%の方から「ダイエットできた」との回答をいただきました。
2.◯◯大学の学生60名に10日間に渡って△△を実践いただきました。すると、「睡眠が深くなった」と回答した人が80%(48人)にのぼりました。
このように具体的なデータ(数字)を盛り込むことによって、読む人の納得度が高まりやすくなります。その結果、プレゼン資料やセールス文章の成果が出やすくなるのです。
もちろん、数字を使ったにもかかわらず、「たいしたことがない」「信頼できない」「信憑性が低い」と思われては意味がありません。数字の効果を最大限に引き出すためには、どういう使い方(提示方法)をすればいいのかよく考えましょう。