日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2019/10/28 09:37
先日神戸で講演した際に、少し足を延ばして姫路付近を歩いてきた。姫路駅から播但線で1駅乗った京口駅は、市街地にも関わらず無人駅だった。鉄道が引かれた際、姫路城の外堀の内側に鉄路を敷くことができず、播但線は外堀東側を走っている。そして、西国街道の姫路城下への京側の入口にあたるところに設けられたのが京口駅だ。
この京口駅から北西に少し歩いたところにあるのが、「五軒邸」という地名。これで「ごけんやしき」と読む。今でも立派に邸宅が立ち並んでいる場所で、江戸時代には姫路藩の侍屋敷だった場所だ。地名は古くは「五間邸」とも書かれたらしく、5軒の立派な家があった場所、というわけでもなさそうだ。
そして、ここからさらに北に少し歩くと、「五郎右衛門邸(ごろうえもんてい)」というユニークな地名がある。人名に由来する地名はたくさんあるが、「邸」まで含んだ地名というのは珍しい。
この付近は、中世に鋳物業の中心地として知られた野里村の一部で、ここには鋳物師の棟梁だった芥田五郎右衛門の屋敷と畠地があった。しかし、江戸時代になると屋敷の一部が姫路藩の武家屋敷として取り上げられて五郎右衛門屋敷という地名となり、のちに五郎右衛門邸と変化した。