『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

驚くほど採用される提案文章の書き方

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2019/09/04 16:56

(photo by 紺色らいおん/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第19回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、驚くほど採用される提案文章の書き方について。

提案書に必要なビフォー・アフター

この連載の一覧はこちら

仕事に提案はつきものです。1対1の個人的な提案であればメールで事足りることもあるでしょうし、部署や会社を巻き込むような提案の場合は、「提案書」という形でまとめなければいけないこともあるでしょう。

提案がサクっと採用される人と、まったく採用されない人。両者にはどのような違いがあるのでしょうか? 実は、その違いは提案内容ではなく、文章の書き方にあるケースがほとんどです。

以下は、提案の文章を書くときにオススメの書き方フォーマットです。

【提案型フォーマット】
1.現状の問題・課題を書く
→いま□□という問題・課題がありますよね。
2.提案を書く
→この問題を解決するためには○○が必要です。
3.提案の具体案を書く
→具体的には、☆☆のようなやり方をします。
4.効果・効能を書く
→○○をすることで、こんな効果・効能が得られます。
5.見通しを書く
→まずは、◇◇から始めてみてはどうでしょう?

提案文章で大事なのは、ビフォー・アフターです。上記のフォーマットであれば、1で現状の問題や課題を書き(ビフォー)、4でその問題が解決された様子を書きます(アフター)。そして、このビフォー・アフターの変化をもたらすきっかけとなるものが、2で示す提案内容です。

多くの「採用されない提案」には、提案内容ばかりが書かれていて、現状どのような問題(ビフォー)が存在するのかが書かれていません。また、その問題が解決されると、どういうすばらしい未来(アフター)が待ち受けているのかも書かれていません。受け取る側からすると、実に魅力の薄い提案です。

そこで提案型のフォーマットを活用することにより、ビフォー・アフターの漏れを防ぐことができます。つまり、受け取る側にとって魅力あふれる提案になっている可能性が大ということです。

実例:「ストレッチタイムの導入」を提案する

提案型フォーマットを使った例文を紹介します。

<提案例文1>
【1.現状の問題を書く】
最近、スタッフが腰痛や肩こりを訴えるケースが増えています。長時間の座り仕事が続いていることが要因のひとつのようです。
【2.提案を書く】
そこで提案です。1日2回、ストレッチをする時間を作ってはいかがでしょう。
【3.提案の具体案を書く】
毎日11時と15時に3分ずつ、オフィスに静かめのBGMを流します。その時間は「ストレッチタイム」として、スタッフおのおのが席の周りでストレッチを行います。【4.効果・効能を書く】
定期的にストレッチをして、筋肉を動かすことで、慢性的な腰痛や肩こりの解消が期待できます。また、心身がリフレッシュするので、その後の集中力、ひいては仕事の効率と生産性のアップも期待できます。
【5.見通しを書く】
緩急のあるワークスタイルはスタッフにも喜ばれるはずです。試しに10月の1カ月間、「3分ストレッチタイム」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

 「ストレッチする時間を作りましょう」という提案だけでは、なかなか受け入れてもらえません。それをする理由や、そこで得られるメリットが見えないからです。場合によっては「就業時間は仕事する時間だ!」と、提案者であるあなたが怒られてしまうかもしれません。

一方、例文のように「腰痛や肩こりを訴えるケースが増えている」と現状の問題・課題を示したり(1)、「それらが解消されれば、集中力、ひいては仕事の効率や生産性が高まる旨(効果・効能)」を示したりすることで(4)、提案内容の説得力が高まりました。

「スタッフや会社の利益になる」と判断されれば、当然、その提案は受け入れられやすくなります。「毎日11時と15時に3分ずつ」と具体案を示している点や(3)、「試しに10月の1カ月間」とスモールステップを示している点も秀逸です。

実例:「分煙化」を提案する

<提案例文2>
【1.現状の問題・課題を書く】
ここ数年、お客様から「タバコの煙が気になります」「禁煙にしてもらえませんか?」といった要望を受けるケースが増えています。
【2.提案を書く】
そこで、当店における分煙化を提案します。
【3.提案の具体案を書く】
具体的には、店内奥側の窓際スペースにガラス張りの喫煙席を作り、「完全分煙」を実現します。
【4.効果・効能を書く】
完全分煙化を図ることで、非喫煙者の心理的な不安が解消されるほか、これまでタバコの煙が気になり来店を控えていた人たちの来店が見込まれます。また、喫煙者にとっても「周りの目を気にせずにタバコを吸える」というメリットがあります。喫煙者・非喫煙者の両者にとってはもちろん、当店にとっても大きなメリットがあります。
【5.見通しを書く】
改装工事の期間は約5日間。来客数が落ち込む8月中旬に行うのが最善かと考えます。改修工事はA社にお願いする方向です(詳細は別紙をご覧ください)。ご検討いただけますよう、よろしくお願いいたします。

分煙化の提案ですので、分煙化することで、お店にどれくらいメリットがあるかを示さなければいけません。今回は提案の根拠としてお客様の不服や要望を伝えています(1)。お店としては、真摯に向き合わざるを得ない問題・課題ではないでしょうか。

また、店内奥側に喫煙席を設けるという具体的なアイデアを示すほか(3)、分煙化することのメリットも十分に盛り込んでいます(4)。さらに、分煙化を進めるに際しての見通し(改装工期など)についても、先回りして提案しています(5)。このように、読む人の反論の芽をつぶすことも、提案する文章には必要です。

提案型フォーマットが提案ベタな人を救う!

どんな提案であれ、提案する人にしかメリットがないとしたら、その提案が採用される見込みはありません。仕事における提案では、対象となる人(お客様)や会社のメリットになる要素を盛り込む必要があります。

提案型フォーマットは、そうした要素が自然と盛り込まれるよう設計されています。1〜5の各パートに具体的に書き込むだけで、説得力のあるビフォー・アフターが表現できるのです(=提案が採用されやすくなる)。提案ベタな人から提案採用率を高めたい人まで、あらゆるビジネスパーソンの一助となるでしょう。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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