『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

誠意を伝える「お詫びメール」に必要な5つのポイント

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2019/05/08 16:15

(photo by acworks/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第15回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回はお詫びメールに必要な5つのポイントについて。

お詫びメールは、謝ればいいというものではない

この連載の一覧はこちら

あなたは、安易なお詫びメールを書いて、相手を怒らせたことはありませんか? 

お客様などへのお詫びメールでは、不満をもつ相手の気持ちに寄り添いながら、「なぜそのような誤りやミスが起きたのか」という原因や、今後の具体的な対応策を伝える必要があります。もちろん、誠意を伝えるためには丁寧なお詫びのフレーズも欠かせません

【ダメなお詫びメール】 

このたびは、欠陥商品をお送りしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
弊社で責任をもって、正常な商品と交換させていただきます。

どうぞよろしくお願いいたします。


お世辞にも「誠実」とは言い難いお詫び文です。ミスの原因には触れておらず、今後の対応策も具体的には書かれていません。

なにより問題なのは、文面が淡白すぎて、お詫びの気持ちが感じられない点です。これでは相手が「本当に悪いと思っているのか?」と怒りの感情を増幅させる恐れもあります。

相手の怒りを鎮めるお詫びメールとは?

では、相手に快く許してもらうには、どのような内容を書けばいいのでしょうか。一例を紹介します。

【許しを得やすいお詫びメール】

このたびは、欠陥商品をお送りしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
トランクのキャスターが外れていたとのこと。
さぞご不快な思いをされたことと存じます。
深くお詫び申し上げます。

原因ですが、状況から判断して、キャスターの留め具の不具合が考えられます。
(1000個に1個程度の割合で留め具の不良が生じるデータがございます)
発送前の検品が行き届かなかった点についても、重ねてお詫び申し上げます。

つきましては、至急、品質に万全を期した商品をお届けにあがります。
明日23日(水)の13時以降で、ご都合のいい日時をお知らせください。

以後、同じような不手際がないよう、製造精度や検品の質を高めていく所存です。
誠に勝手なお願いではございますが、引き続き、ご愛顧いただければ幸いです。

なお、お手元の欠陥商品につきましては、当日うかがう配送員が引き取ります。
ご迷惑とお手数をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

このたびは、本当に申し訳ございませんでした。

先ほど紹介した【ダメなお詫びメール】とは雲泥の差です。あなたがお詫びメールを受け取った相手だった場合、快く許せるのは、こちらのほうではないでしょうか。

「お詫びのメール」には具体的な謝罪と改善策を書く

【許しを得やすいお詫びメール】には以下の5つのポイントが盛り込まれています。

ポイント1:誠意ある謝罪

お詫びメールには、それなりの文量が必要です。「大事なのは文量より心」などと考えてはいけません。目の前に相手がいないメールでは、こちらが深々と頭を下げている姿を見せることはできません。言葉を変えながら何度もお詫びして、はじめて誠意が伝わるのです。

【許しを得やすいお詫びメール】では「申し訳ございませんでした」と「お詫び申し上げます」を、それぞれ2回ずつ使っています。くり返しお詫びすることで、誠意が伝わりやすくなります。“深々と頭を下げている姿”を相手に伝えるためには、お詫びの言葉の「量」にこだわらなければいけないのです。

ポイント2:腹を立ててる相手の気持ちに寄り添う

相手の気持ち(怒りや落胆、失望)に寄り添う姿勢も求められます。相手は、「謝ってほしい」のはもちろんのこと、腹立たしい、あるいは、面倒を被った自分の気持ちを理解してもらいたいと思っています。

【許しを得やすいお詫びメール】では「さぞご不快な思いをされたことと存じます」と相手に寄り添っています。お詫びの言葉ばかり並べても、相手に「本当にこっちの気持ちがわかっているのか!」と思われてしまえばアウトです。“あなたのその不快な気持ちは理解しています”ということを文章でしっかり伝える必要があります。

ポイント3:原因を書く

人によっては(あるいは、ケースによっては)、どうしてこのような誤りやミス、トラブルが発生したのか原因を知りたがる人もいます。すぐに原因が特定できない場合は、<迅速に原因を調査する>旨を伝えたうえで、現状で推測できる原因を伝える必要があります。

【許しを得やすいお詫びメール】では「原因ですが、状況から判断して、キャスターの留め具の不良が考えられます。(1000個に1個程度の割合で留め具の不良が生じるデータがございます)」と推測を伝えています。原因を伝えることは、相手への義務と心得ておきましょう。

ポイント4:具体的な対応策を書く

お詫びはしているけど、具体的な対応策が書かれていないお詫びメールもNGです。「お詫び」と「対応策」はセットです。

【許しを得やすいお詫びメール】では「至急、品質に万全を期した商品をお届けにあがります。明日23日(水)の13時以降で、ご都合のいい日時をお知らせください」と、具体的な対応策を示しています。すみやかに具体的な対応策を示すことで、相手の溜飲が下がりやすくなります。

ポイント5:具体的な改善策を書く

同じ誤りやミス、トラブルが再び起きないよう、今後の改善策を伝えることも、お詫びメールの役割のひとつです。

【許しを得やすいお詫びメール】には「以後、同じような不手際がないよう、製造精度や検品の質を高めていく所存です」と書きました。建前上の改善策では、相手の怒りの火に油を注ぐことになりかねません。できる限り具体的な改善策を示しましょう。

お詫びをメールだけに頼るのはキケン!

お詫びをする際、安易な「責任転嫁」や「言い訳」「取り繕い」には十分注意しましょう。弁解や弁明をせず、書き手が責任を負う姿勢を見せることによって、相手の気持ちを和らげやすくなります。

もちろん、こちらに100%非がない場合は、非がない理由を説明する必要がありますが、そのときも、相手の立場に立って、相手の気持ちを害さない書き方をしなければいけません(くれぐれも感情的になって相手を責めないように)。

お詫びメールは、相手との信頼関係を築くチャンスでもあります。その内容(誠意ある謝罪や具体的な改善策など)に相手が感動すれば、逆に、信頼を勝ち取ることもできます。誠意をもって文章を書くことによって、その人自身(その会社)の株が上がることもあります。

なお、お詫びは「必ずメールでしなければいけない」というものではありません。誤りやミス、不手際などの度合いが高い場合や、相手の怒りが激しい場合であれば、真っ先に電話をしたり、相手先を訪問したりする必要もあります。

ひとまずのお詫びメールを書く場合は、「のちほど改めてお電話させていただきます/ご訪問いたします」のような一文を添えることも検討しましょう。お詫びメールを書くスキルを磨くことは、あなたのコミュニケーション能力を総合的に伸ばすことにほかなりません。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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