一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第15回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回はお詫びメールに必要な5つのポイントについて。
お詫びメールは、謝ればいいというものではない
あなたは、安易なお詫びメールを書いて、相手を怒らせたことはありませんか?
お客様などへのお詫びメールでは、不満をもつ相手の気持ちに寄り添いながら、「なぜそのような誤りやミスが起きたのか」という原因や、今後の具体的な対応策を伝える必要があります。もちろん、誠意を伝えるためには丁寧なお詫びのフレーズも欠かせません
【ダメなお詫びメール】
このたびは、欠陥商品をお送りしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
弊社で責任をもって、正常な商品と交換させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
お世辞にも「誠実」とは言い難いお詫び文です。ミスの原因には触れておらず、今後の対応策も具体的には書かれていません。
なにより問題なのは、文面が淡白すぎて、お詫びの気持ちが感じられない点です。これでは相手が「本当に悪いと思っているのか?」と怒りの感情を増幅させる恐れもあります。
相手の怒りを鎮めるお詫びメールとは?
では、相手に快く許してもらうには、どのような内容を書けばいいのでしょうか。一例を紹介します。
【許しを得やすいお詫びメール】
このたびは、欠陥商品をお送りしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
トランクのキャスターが外れていたとのこと。
さぞご不快な思いをされたことと存じます。
深くお詫び申し上げます。
原因ですが、状況から判断して、キャスターの留め具の不具合が考えられます。
(1000個に1個程度の割合で留め具の不良が生じるデータがございます)
発送前の検品が行き届かなかった点についても、重ねてお詫び申し上げます。
つきましては、至急、品質に万全を期した商品をお届けにあがります。
明日23日(水)の13時以降で、ご都合のいい日時をお知らせください。
以後、同じような不手際がないよう、製造精度や検品の質を高めていく所存です。
誠に勝手なお願いではございますが、引き続き、ご愛顧いただければ幸いです。
なお、お手元の欠陥商品につきましては、当日うかがう配送員が引き取ります。
ご迷惑とお手数をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。
このたびは、本当に申し訳ございませんでした。
先ほど紹介した【ダメなお詫びメール】とは雲泥の差です。あなたがお詫びメールを受け取った相手だった場合、快く許せるのは、こちらのほうではないでしょうか。
「お詫びのメール」には具体的な謝罪と改善策を書く
【許しを得やすいお詫びメール】には以下の5つのポイントが盛り込まれています。
ポイント1:誠意ある謝罪
お詫びメールには、それなりの文量が必要です。「大事なのは文量より心」などと考えてはいけません。目の前に相手がいないメールでは、こちらが深々と頭を下げている姿を見せることはできません。言葉を変えながら何度もお詫びして、はじめて誠意が伝わるのです。
【許しを得やすいお詫びメール】では「申し訳ございませんでした」と「お詫び申し上げます」を、それぞれ2回ずつ使っています。くり返しお詫びすることで、誠意が伝わりやすくなります。“深々と頭を下げている姿”を相手に伝えるためには、お詫びの言葉の「量」にこだわらなければいけないのです。
ポイント2:腹を立ててる相手の気持ちに寄り添う
相手の気持ち(怒りや落胆、失望)に寄り添う姿勢も求められます。相手は、「謝ってほしい」のはもちろんのこと、腹立たしい、あるいは、面倒を被った自分の気持ちを理解してもらいたいと思っています。
【許しを得やすいお詫びメール】では「さぞご不快な思いをされたことと存じます」と相手に寄り添っています。お詫びの言葉ばかり並べても、相手に「本当にこっちの気持ちがわかっているのか!」と思われてしまえばアウトです。“あなたのその不快な気持ちは理解しています”ということを文章でしっかり伝える必要があります。
ポイント3:原因を書く
人によっては(あるいは、ケースによっては)、どうしてこのような誤りやミス、トラブルが発生したのか原因を知りたがる人もいます。すぐに原因が特定できない場合は、<迅速に原因を調査する>旨を伝えたうえで、現状で推測できる原因を伝える必要があります。
【許しを得やすいお詫びメール】では「原因ですが、状況から判断して、キャスターの留め具の不良が考えられます。(1000個に1個程度の割合で留め具の不良が生じるデータがございます)」と推測を伝えています。原因を伝えることは、相手への義務と心得ておきましょう。
ポイント4:具体的な対応策を書く
お詫びはしているけど、具体的な対応策が書かれていないお詫びメールもNGです。「お詫び」と「対応策」はセットです。
【許しを得やすいお詫びメール】では「至急、品質に万全を期した商品をお届けにあがります。明日23日(水)の13時以降で、ご都合のいい日時をお知らせください」と、具体的な対応策を示しています。すみやかに具体的な対応策を示すことで、相手の溜飲が下がりやすくなります。
ポイント5:具体的な改善策を書く
同じ誤りやミス、トラブルが再び起きないよう、今後の改善策を伝えることも、お詫びメールの役割のひとつです。
【許しを得やすいお詫びメール】には「以後、同じような不手際がないよう、製造精度や検品の質を高めていく所存です」と書きました。建前上の改善策では、相手の怒りの火に油を注ぐことになりかねません。できる限り具体的な改善策を示しましょう。
お詫びをメールだけに頼るのはキケン!
お詫びをする際、安易な「責任転嫁」や「言い訳」「取り繕い」には十分注意しましょう。弁解や弁明をせず、書き手が責任を負う姿勢を見せることによって、相手の気持ちを和らげやすくなります。
もちろん、こちらに100%非がない場合は、非がない理由を説明する必要がありますが、そのときも、相手の立場に立って、相手の気持ちを害さない書き方をしなければいけません(くれぐれも感情的になって相手を責めないように)。
お詫びメールは、相手との信頼関係を築くチャンスでもあります。その内容(誠意ある謝罪や具体的な改善策など)に相手が感動すれば、逆に、信頼を勝ち取ることもできます。誠意をもって文章を書くことによって、その人自身(その会社)の株が上がることもあります。
なお、お詫びは「必ずメールでしなければいけない」というものではありません。誤りやミス、不手際などの度合いが高い場合や、相手の怒りが激しい場合であれば、真っ先に電話をしたり、相手先を訪問したりする必要もあります。
ひとまずのお詫びメールを書く場合は、「のちほど改めてお電話させていただきます/ご訪問いたします」のような一文を添えることも検討しましょう。お詫びメールを書くスキルを磨くことは、あなたのコミュニケーション能力を総合的に伸ばすことにほかなりません。