一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第14回>
伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は仕事のメールにおけるNG文面について。
プライベートの「気軽さ」を仕事に持ち込むのはキケン
SNSを使って誰もが気軽に投稿できる時代。また、チャットアプリを使って家族や友人と気軽にやり取りできる時代。インターネットと情報端末(スマホなど)の充実によって、私たちが文章を書く機会は確実に増えました。
一方で、その「気軽さ」が災いして、仕事で使うメールにも「軽々しい表現」を使ってしまう人が少なくありません。
「言葉の乱れは心の乱れ」などと説教臭いことを言うつもりはありません。しかし、ビジネスシーンでは、最低限、そのメールを受け取った相手に「なれなれしい」「失礼だ」「マナー知らず」と思われない言葉遣いや表現を心がける必要があります。
「軽々しいメール文面」の実例集
「軽々しい表現」の多くは、カジュアルなプライベートシーンで使われる「話し言葉」です。また、なかには明らかな「言葉の乱れ」や、ネット上で飛び交う「スラング」も含まれています。悪気なく使った言葉によって、あなた自身の信用が低下することも考えられますので、習慣的に使っている言葉があれば、注意が必要です。
【気軽すぎる】なるはやでお願いします。
【改 善 例】なるべく早めにお願いします。/明日(13日)の17時までにお願いします。
【気軽すぎる】それとは真逆の見解です。
【改 善 例】それとは正反対の見解です。
【気軽すぎる】コピーしときました。
【改 善 例】コピーしておきました。
【気軽すぎる】ときたまミスが起きます。
【改 善 例】ときどきミスが起きます。
【気軽すぎる】もうちょっとで確定します。
【改 善 例】間もなく確定します。
【気軽すぎる】さっきは失礼いたしました。
【改 善 例】先ほどは失礼いたしました。
【気軽すぎる】ビンテージ品なんかもあります。
【改 善 例】ビンテージ品などもあります。
【気軽すぎる】やっと完成しました。
【改 善 例】ようやく完成しました。
【気軽すぎる】山本さんは、私の3個上です。
【改 善 例】山本さんは、私の3つ上です。/山本さんは、私より3歳年上です。
【気軽すぎる】失敗ばっかりくり返しています。
【改 善 例】失敗ばかりくり返しています。
【気軽すぎる】いろんな機能があります。
【改 善 例】いろいろな機能があります。/さまざまな機能があります。
【気軽すぎる】規則じゃありません。
【改 善 例】規則ではありません。
このような話し言葉をうっかり使っていませんか? もう少しあげてみましょう。
【気軽すぎる】進めちゃってください。
【改 善 例】進めてください。
【気軽すぎる】注文しなきゃならないので〜
【改 善 例】注文しなくてはいけないので〜
【気軽すぎる】なるほどですね。
【改 善 例】おっしゃる通りです。
【気軽すぎる】ちょっと遅れるかもしれません。
【改 善 例】少し遅れるかもしれません。/少々遅れるかもしれません。
【気軽すぎる】この方向性でいきたいんですが〜
【改 善 例】この方向性でいきたいのですが〜
【気軽すぎる】こっちの案で進めておきます。
【改 善 例】こちらの案で進めておきます。
【気軽すぎる】こんな内容です。
【改 善 例】このような内容です。
【気軽すぎる】あんまり人気がありません。
【改 善 例】あまり人気がありません。
【気軽すぎる】ふつうにいいアイデアだと思います。
【改 善 例】いいアイデアだと思います。/お世辞抜きにいいアイデアだと思います。/意外といいアイデアだと思います。
【気軽すぎる】弊誌で取り上げることはないです。
【改 善 例】弊誌で取り上げることはありません。
【気軽すぎる】私的には賛成です。
【改 善 例】私は賛成です。
【気軽すぎる】いっぱいご意見をいただきました。
【改 善 例】多くのご意見をいただきました。/たくさんのご意見をいただきました。
【気軽すぎる】たぶん変更ないでしょう。
【改 善 例】おそらく変更はないでしょう。
【気軽すぎる】がっつり話し合いましょう。
【改 善 例】しっかり話し合いましょう。
親密さと軽々しさは紙一重と忘れない
いかがでしたか? 知らず知らずのうちに、メールの中で使っていたという人も多いのではないでしょうか。
もっとも、以上のような文面のすべてを否定するわけではありません。言葉や表現の良し悪しは、相手との関係性や親密度によっても変化するものだからです。
たとえば、メールを送る相手が気心の知れた社内の同僚であれば、許される言葉や表現もあるでしょう。同期入社で5年も一緒にいるのに、いつでもバカ丁寧な敬語のメールを送りつけるのは、それはそれでコミュニケーション不全といえるかもしれません(相手がそのコミュニケーションを望んでいるなら別ですが)。
いずれにしても、上司や取引先、お客様相手のメールで「軽々しすぎるメール」を書くのは禁物です。場合によっては、あなたの信用を落とすだけではなく、会社のメンツも潰しかねません。とりわけ注意すべきは「話し言葉」「乱れた言葉」「スラング」の3点です。友人と気軽にチャットをするノリで仕事のメールを書いてしまわないよう十分に注意しましょう。