本コラムは日本実業出版社が発行、エヌ・ジェイ出版販売株式会社が販売する企業向け直販月刊誌「企業実務」内に掲載されているコラムを転載したものです。
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2019/02/15 10:42
企業の経理・総務担当者が職場で直面する、規定集・法規集などに答えが見当たらない疑問、状況がレアケースすぎてそのまま規定を当てはめていいのかどうか迷う悩みに、プロの実務家・専門家が答えます!
※本コラムの内容について※
本コラムは、月刊「企業実務」内で連載されている同名の連載を再編集したものであり、関連法規・規定等については公開時点のものに準拠しています。
従業員100名の小売店チェーンの総務部長です。先日、当社の取締役から「借金があって自己破産を考えているが、無職になるのは避けたい」と相談を受けましたが、破産後も留任することに問題はありますか。
自己破産を申し立てると、裁判所での破産手続開始決定後、破産手続が開始したことなどの官報公告が行なわれます。もっとも、通常、会社関係者が官報公告を常に確認していることはないと考えられます。本人の申告がない限り、自己破産の事実を会社が知る可能性は低いといえます。
例外として、会社や会社関係者から借金をしていた場合、その者には債権者に対する通知が届くことになります。そうした場合は、結果として、自己破産の事実を会社が知ることになります。
また、取締役の資格については、以前は「破産して復権していない者」は取締役になることができませんでしたが、現在の会社法ではそのような制限はありません。一方で、株式会社と取締役との関係は、民法上の委任に関する規定が適用されることになります。
そして、破産手続の開始決定は、民法上の委任の終了事由に該当します。破産手続開始決定を受けた場合、株式会社と取締役の間の委任関係が終了することにより、取締役は退任することになります。
ただし、いったん退任することにはなりますが、会社として支障がないというのであれば、早期に株主総会を開催して、自己破産した者を、改めて取締役に選任することが可能です。したがって、自己破産をしたからといって、取締役として貴社で働き続けることができなくなるわけではありません(企業実務 17年8月号より転載)。
祝田法律事務所パートナー弁護士。企業法務を専門とし、M&A、グループ内組織再編、コーポレートガバナンス、取締役会運営支援、株主総会指導等に詳しい。
従業員30名の金属加工業の管理課長です。当社には仕事熱心な技術者が多く、休日にもちょっと出てきて工場で作業をする者もいます。彼らが作業中に怪我をした場合、労災になるのでしょうか。
会社が休日出勤を命じて、そこで怪我をしたというのであれば、当然のことながら労災認定されるでしょう。そうでない場合に労災認定されるかどうかについては、その技術者が会社の指揮命令下にあったのか、ないしは指揮命令下にあったことがうかがわれる事情があったかによって、変わってくると考えられます。
休日出勤は原則として会社の指揮命令のもとに行なうものです。明確な指示がなくとも、たとえば繁忙期で休日も出なければ仕事が回らないことがはっきりしており、その時期は従業員は例外なく出勤している、といったような場合もあります。そうした会社の指示の下にあったとみなせるような場合は、労災認定される可能性が高いでしょう。
一方で、実際には仕事が忙しいわけではないけれど、休日でも家に居づらくて会社で仕事でもしていたほうがまし、というような理由で出勤する人もいないわけではありません。そこで、会社が命じたわけでもないのに、本人の意思で業務上の必要もないのに勝手に出勤して作業をしていた、というのであれば、作業中の怪我であっても労災とは認められない可能性があります。
おたずねの件で労災が認められるかどうかは、実態に即したケース・バイ・ケースで判断されるということになります
ただし、命令がないのに働いている技術者がいるというのなら、おそらくはその時間の賃金も支払われていないと思われますから労務管理上、明らかに問題がある状況といえます。休日出勤時の賃金支払いも含めて休日出勤については会社がきちんと管理し、必要もないのに出社することは禁止する、というように、ルールを明示し運用することが、トラブル防止には不可欠です。
また、会社が従業員に休日労働を命じるには、その前提として労働者の過半数代表者との36協定の締結が必要です。休日出勤はその範囲内で行う必要がありますので、一度36協定の内容も確認してみてください(企業実務 17年8月号より転載のうえ一部編集)。
社会保険労務士法人せんだ事務所代表社員。警備会社、予備自衛官、消防団など様々な分野の現場でトラブルとその解決方法を学び、2010年社会保険労務士として開業。