本コラムは日本実業出版社が発行、エヌ・ジェイ出版販売株式会社が販売する企業向け直販月刊誌「企業実務」内に掲載されているコラムを転載したものです。
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2019/02/08 11:43
企業の経理・総務担当者が職場で直面する、規定集・法規集などに答えが見当たらない疑問、状況がレアケースすぎてそのまま規定を当てはめていいのかどうか迷う悩みに、プロの実務家・専門家が答えます!
※本コラムの内容について※
本コラムは、月刊「企業実務」内で連載されている同名の連載を再編集したものであり、関連法規・規定等については公開時点のものに準拠しています。
従業員30名の金属加工業の経理部長です。当社は同族の非公開会社ですが、先日、「利益が上がっていない要因を知りたい」と、同族外の株主から会計帳簿の閲覧を求められました。どこまで開示が必要でしょうか。
議決権の3%以上または発行済株式(自己株式を除きます)の3%以上(3%の要件は、いずれも定款により引き下げ可能)を有する株主は、営業時間内に会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧または謄写の請求ができます。
「会計帳簿」は計算書類等の作成の基礎となる帳簿(仕訳帳・総勘定元帳等)を指し、「これに関する資料」は会計帳簿作成の材料となった資料(伝票・契約書等)を指します。
もっとも、閲覧等の請求の際は、請求の理由を明らかにする必要があります。その理由が「株主の権利の確保・行使に関する調査」「会計不正の調査」というだけでは不十分で、「関連会社への多額の無担保融資の監視監督を行なうため」「美術品の取得について、その内容・数量、購入時期・金額、購入相手等を調査するため」という程度の具体化が必要です。
したがって、今回のような「利益が上がっていない要因を知りたい」程度では、具体化が不十分であるため、会社は請求を拒否できると考えられます。なお、会社は、次の場合にも、閲覧等の請求を拒否できます。
(企業実務 17年7月号より転載)。
祝田法律事務所パートナー弁護士。企業法務を専門とし、M&A、グループ内組織再編、コーポレートガバナンス、取締役会運営支援、株主総会指導等に詳しい。
従業員60名の販売会社の総務部長です。当社でもサービス残業の実態があるようです。先日、厚生労働省が“ブラック企業”として社名を公表したというニュースを見ましたが、公表されるとどうなるのでしょうか。
厚生労働省が公表した「ブラック企業リスト」とは、「労働基準関係法令違反に係る公表事案」という資料のことです。厚生労働省HPの「長時間労働削減推進本部」のコーナーに掲載されており、昨年10月からの労働関係法令違反企業について、名称、所在地、違反法条、事案概要などが確認できます。
名称が公表されることについて、最も大きな影響が考えられるのは、求人活動です。いったん情報が公開されると、インターネットの世界ではその真偽を問わず、痕跡がどこかに残るものです。
いまの求職者は受けてみようと思う企業があれば、その企業名で情報を検索します。特に人手不足が顕著ないま、そうしたマイナスイメージのある企業をわざわざ受けようとはしないでしょう。さらに、情報の発信源が厚生労働省という最も確度の高い情報ですから、採用活動におけるマイナスは計り知れません。
また、株主、取引金融機関、取引先などのステークホルダーも、投資や融資は言うに及ばず、付き合いのある企業の社会的なイメージには注意を払っています。「ブラック企業認定された」という情報が流れれば、そうした関係者に懸念を抱かせ、信用不安にすらつながる可能性もあります。
もっとも、労務管理に何らかの問題があり、労働基準監督署の調査が入ったとしても、調査に対する協力とその後の改善に取り組む姿勢を見せれば、指導があったとしてもそれですぐに社名公表とはならないでしょう。
貴社にサービス残業をはじめとする法律違反の実態があるなら改善の必要はあるでしょうが、先に述べたような協力的な姿勢や改善意識があるなら社名公表を恐れる必要はないかと思います(企業実務 17年7月号より転載)。
社会保険労務士法人せんだ事務所代表社員。警備会社、予備自衛官、消防団など様々な分野の現場でトラブルとその解決方法を学び、2010年社会保険労務士として開業。