効率化マニアの外資系コンサルが教える! 無駄な時間をゼロにする「時間の断捨離」最前線<第11回>
現役外資系コンサルとして膨大な仕事を最少の時間でこなしつつ、月間10万PVブログ「NAEの仕事効率化ノート」も運営するNAEさんに、ビジネスの現場で役に立つ時短術のコツを教わります。今回は確認不足による「手戻りの無駄」について。
仕事の「手戻り」は、自分と相手の時間を奪う
私は仕事の場ではつねづね「こうしたほうが早くない?」と自分自身はもとより部下に問いかけています。スピード感を保つべく、無駄を排除するやり方をいつも探っているからです。
ただし同時に、「早く終える」ことを優先するあまり「手戻り」のリスクが高まることのないように注意しています。なぜなら、手戻りは仕事をするうえで強く意識して避けるべきものだからです。
一般に、コンサルタントの時間単価はとても高いもの。それでも仕事を任せてもらえるのには3つの理由があると、私は考えています。
・知識を買いたい……自社ではリーチできない広い情報・深い知見を求めている
・技能を買いたい……無理難題を乗り越える、高度な専門性や技術を求めている
・時間を買いたい……競合を出し抜くスピード感を実現する推進力を求めている
とくにこの3つ目の「時間を買いたい」は多くのクライアントが共通して求めるものです。クライアントからの手戻りはこの期待を裏切る行いにほかなりません。コンサルタントの立場からすると、自分が仕事を任されている意義が薄まるように感じられるため、忌み嫌うものでもあります。
だからこそコンサルタントにとって、イケイケドンドンと早く仕事を終わらせる「攻撃的な仕事術」と同じくらい、手戻らないよう慎重に仕事を進める「防御的な仕事術」が大事なのです。
そこで今回は、私がコンサルタントとして現場の最前線でいつも必ず実践している、手戻り防止のための「3つの確認点」をご紹介します。
「仕上がりは早いが雑すぎる」「ちゃんと理解してから仕事しろ」などと言われたことのある方は、ぜひ参考にしてください。
手戻りを防ぐ、3つの確認点
「最新のスマホについての情報をまとめてくれ、という上司の指示通りに作った資料なのに、レビューでぜんぜん違うと怒られてやり直しになった」
……という手戻りを例に、具体的な確認ポイントを解説していきます。
第1ポイント:課題意識の確認
まず、仕事を依頼してきた人がどのような課題を抱えているかを把握します。
少なくとも次の2点を、確認しましょう。
1. そもそも解決すべき課題はなにか
2. それに向けて、なにをどうしたいor誰にどうしてほしいのか
たとえば「最新のスマホをまとめる」といっても、「競合他社から出ているスマホのスペックをベンチマークするため」「画面サイズのトレンドを知るため」「メーカー別の機種数と売上から趨勢を知るため」など、目的=課題意識が違えば資料に書くべき内容も異なるでしょう。
くわえて、その資料を使って誰になにを話すのか、人にどう動いてもらいたいのかによって、資料の視点・視野・視座は異なるはずですし、おのずとトーンも違ってくるでしょう。
課題意識は、資料の存在意義や方向性を決めるキーです。必ず確認しましょう。
第2ポイント:期待値の確認
次に、仕事を振ってきた相手が自分になにを期待しているのかを確認します。ポイントは次の2点です。
1. どんな情報がほしいか
2. Must(絶対に必要な情報)とNice to have(あるとよい情報)の境界はどこか
まとめの結果としてなにが明らかになっていればよいか、何年前までを最新と呼ぶか、画面サイズ何インチ以下をスマホと呼ぶか、海外機種も含むか日本のものだけか……といった点を確認せずに先へ進むことは、手戻りのリスクを高めてしまいます。
しかし、時には「いいから全部調べろ」と無茶振りされることもあります。その場合、どこまでがMustでどこからがNice to haveか、という観点で期待値の濃淡をつけてもらいます。Nice to haveな範囲に時間を割きすぎてMustな部分がおろそかになるのは本末転倒だからです。
期待値が明らかになると、そのぶん無駄なくポイントを押さえた資料が作成できます。必ず確認しましょう。
第3ポイント:段取りの確認
最後に、今後のステップを確認します。ポイントは次の2点です。
1. 最終的な締切はいつか
2. 中間のチェックポイントはいつか
どんな状況においても締切は必ず確認しましょう。上司やクライアントは忙しいので、レビュー用の時間枠がボトルネックになりやすいもの。依頼を受けた時点で先に時間をおさえてしまうのが得策です。
くわえて、最終的な締切の前に中間チェックポイントを入れるべきか、入れるならいつかを決めます。進捗確認というより「この時点でここまでできていない場合、次善策に切り替える」という判断のためのものです。
段取りが事前に明らかになると、相手も自分も動きやすくなるので、締切を含めて確認しましょう。
「たかが確認、されど確認」
おそらくこの記事を読んだ方のなかには、「確認ばかりしていたら実際の仕事に割ける時間が減るじゃないか」と思っている方もいると思います。
もちろん、仕事を多くこなすには時間が必要ですし、無駄なコミュニケーションに時間を使う理由はありません。
しかし、課題意識・期待値・段取りを確認せずいきなり仕事に手をつけると、全然違う方向に全力疾走してしまうリスクがある点は覚えておいていただきたいと思います。
ご紹介した3つの確認点は、多くの仕事に共通する基本的なものです。「たかが確認、されど確認」という心もちで、ぜひ明日からでも意識してもらえれば幸いです。
以上、「確認不足による手戻りの無駄」というテーマで最前線からお伝えしました。