本コラムは日本実業出版社が発行、エヌ・ジェイ出版販売株式会社が販売する企業向け直販月刊誌「企業実務」内に掲載されているコラムを転載したものです。
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2018/11/09 14:14
企業の経理・総務担当者が職場で直面する、規定集・法規集などに答えが見当たらない疑問、状況がレアケースすぎてそのまま規定を当てはめていいのかどうか迷う悩みに、プロの実務家・専門家が答えます!
※本コラムの内容について※
本コラムは、月刊「企業実務」内で連載されている同名の連載を再編集したものであり、関連法規・規定等については公開時点のものに準拠しています。
地場企業が経営する飲食店チェーンの1店を任されています。学生アルバイトを雇用していますが、なかには欠勤しがちな者もいて、シフトを維持するのに四苦八苦します。何か有効な無断欠勤対策はないでしょうか。
会社が設けたルールをアルバイトに徹底するのはもちろんですが、反面、会社側も労働基準法や労働契約書などのルールに則って労務管理を行なわなければなりません。
厚生労働省が2015年の8月から9月にかけて行なった『大学生等に対するアルバイトに関する意識等調査』によると、アルバイト先で最も多く発生したトラブルがシフトに関するものであり、「採用時の合意に基づかないシフトを入れられた」「アルバイト側の都合を聞かず一方的にシフトを入れられた」といった項目の回答が多くなっています。
また、同じ調査では、アルバイト先の58.7%で「書面による労働条件の通知がなかった」、さらに19.1%では「口頭でも具体的な労働条件の説明を受けたことがなかった」との項目が回答されており、採用時の労働条件の説明不足がトラブルにつながっていることを示しています。
この調査結果をふまえると、アルバイトの採用時に労働条件通知書などでシフトの運用に関するルールを丁寧に説明し、会社側もそのルールに沿ってシフトの運用を行なっていくことで、トラブルを減らす効果が期待できるのではないかと考えます。また、アルバイトにシフトに応じた勤務に協力してもらうには、次のような制度を設けてはいかがでしょうか。
まず、アルバイトが急遽欠勤することになった場合には、他のアルバイトにシフトの振替え、もしくは出勤を増やしてもらうよう依頼することになります。そこで、振替えや出勤に応じてくれたアルバイトには、特別手当等のインセンティブを支払うことにします。本人がシフトどおりに出勤した場合に皆勤手当を支給するというインセンティブもあります。
一方、無断欠勤をした場合には就業規則に懲戒処分を設け、「減給もあり得る」といったこととし、アルバイト間の公平を図ることにします。
もっとも、ルールの整備は大切ですが、人手不足の折、アルバイトに一方的に会社の都合を押しつけるだけではうまくいかないでしょう。日頃からコミュニケーションを図って、「用事などがあれば調整するから」といって早めに相談することをうながし、無断欠勤が生じない職場をつくっていくことが重要であると考えます(企業実務 17年5月号より転載)。
東京人事労務ファクトリー代表。ベンチャー・中小企業を中心に、年間100社を超える労働保険・社会保険手続きや、労務問題の解決、サポートを手がけている。
従業員100名の製造業の管理部長です。当社でも職場のいじめやパワーハラスメントがまったくない、とは言い切ることができません。そうした問題の存在は、どこに着目すれば見えてくるでしょうか。
職場のいじめへの対処で最も重要なことは、早期発見・早期対応です。メンタル不調の背景にはいじめやパワーハラスメントがあることが少なくないのですが、心の不調は対応が遅くなればなるほど深刻になる可能性があるからです。
そこで、社員にメンタル不調の兆候が現われていないか、早めに気づくように心がけましょう。離席が多くなったり、昼食を一緒にとるメンバーが変わったり、以前と行動パターンが変わったな、と感じる社員がいるときは要注意です。
一般に、被害者は行為者との接点を避けるようになりがちです。その人が誰かを避けようとしていないか、気をつけて様子を見るようにしてください。遅刻や欠勤が増えたりすれば、さすがに「何かあるのかもしれない」と思うかもしれませんが、そこまでいかなくとも、元気がなかったり、表情が硬かったり、以前より感情的になっているような場合は、メンタル不調のサインかもしれませんし、背景にパワーハラスメントや職場いじめがあるのかもしれません。
メンタル不調による思考力、集中力の低下、睡眠障害、モチベーションの低下といったことが、仕事上のミスの増加につながることもあります。急に痩せたりあるいは太ったり、地味な服を好むようになるなどファッションが変わったり、アルコールやたばこの量が増えたり、変化の現われ方は様々です。
そうした社員がいると感じたときは、早めに声をかけて、「もし何かあればいつでも相談に乗るよ」と伝えてみましょう。もちろん、無理に聞き出そうとしてはいけませんが、もし話してくれた場合は真摯に対応してください。
企業のメンタルヘルス・ハラスメント対策にかかわってきて感じるのが、ハラスメントが起きやすい職場にありがちな特徴として「挨拶がきちんとできていない」という点があることです。
同僚間の挨拶がちゃんとできていなかったり、上司が部下にきちんと挨拶を返さなかったりといったことはないでしょうか。正社員がパートタイマーの名前を覚えず、「パートさん」とだけしか呼んでいない職場も要注意です。名前を覚えるのはごく普通のことだと思います。
正社員と非正規社員の力の差が、悪い意味での上下関係を生み、弱い立場の相手を軽んじる空気が蔓延していると、いじめを誘発しやすくなる、といえます。まずは、職場で日ごろの挨拶やお礼、お詫び等がきちんとできているか確認し、できていないようなら改めていくことが大切です。
なお、ハラスメントを受けている可能性がある社員の話を聞くとき、上司である管理職男性が直接話を聞くことがむずかしい状況で、信頼できる女性の部下がいる場合は、その人に声をかけてもらうのもひとつの方法でしょう(企業実務 17年1月号より転載)。
合同会社オフィスプリズム代表。産業カウンセラー。企業のメンタルヘルスやハラスメント対策等についてのカウンセリングやコンサルティングに従事し、2000社以上の対応実績をもつ。メンタルヘルス等に関する著書多数。