効率化マニアの外資系コンサルが教える! 無駄な時間をゼロにする「時間の断捨離」最前線<第7回>
現役外資系コンサルとして膨大な仕事を最少の時間でこなしつつ、月間10万PVブログ「NAEの仕事効率化ノート」も運営するNAEさんに、ビジネスの現場で役に立つ時短術のコツを教わります。今回は番外編、外資系あるある?「カタカナビジネス用語」について。
もはや宇宙語? カタカナビジネス用語
「本日付でチームにジョインしました」
「今回のアジェンダはこちらです」
「ベンダ毎のSOWは決まってるの?」
スタートアップやWeb系、外資系企業でよく使われるカタカナビジネス用語。聞くたびに
「それどんな意味だっけ」
「なんでわざわざカタカナ語?」
「日本語でいいじゃん」
と思っている方は多いのではないでしょうか。
私は英語の飛び交う外資系コンサルティングファームに所属しているため、横文字を使う側の人間です。そのため、気を抜くと「それロジカルだけどプラクティカルじゃないよね」などと口走ってしまいます……。
言い訳のようですが、社内の仕事であればしょうがない面もあります。外資系企業は海外メンバーと話すことが多いため、むしろ普段からカタカナビジネス語を使っているほうが便利だからです。「ジョイン(参加)」「アジェンダ(議題)」「SOW(Statement Of Work=作業範囲記述書)」、すべて海外メンバーにもそのままの意味で通じるのです。むしろ言い換えるとかえって通じにくくなることもあります。
とはいえ、会話は相手=受け手があってのもの。自分にとってカタカナ語が快適だからといって、相手や状況をわきまえず使ってしまうのは、「伝える」という本来の目的からすると避けるべきでしょう。同じカタカナ語でも会社や部署によって意味合いが異なることもあり、話が通じない可能性も少なくありません(本記事で紹介しているカタカナ語も、私の勤務先での意味合いです)。
そこで今回は自戒を込めて、私の経験上もっとも伝わらなかった=日本語で言い換えるほうがいいカタカナビジネス用語の紹介と言い換えをご紹介します。
どういうこと? って聞かれがちな、カタカナビジネス用語トップ5
第5位:ショートノーティス
「締切直前の急な依頼やお知らせ」の意味で使います。
「通知」の意味の「ノーティス(notice)」と「(時間的に)短い」意味の「ショート(short)」をつなげたもの。
たとえば、
- 「1時間後までに対応してください」といった依頼メールの文末に、「ショートノーティスで申し訳ありません」と付記する
- 急すぎる仕事の依頼に「ショートノーティスすぎて厳しくないですか?」と返事をする
というように使います。
この言葉のおもしろいところは、使われている単語自体は簡単なのに、「ショートノーティス」とカタカナで書くと一気にわかりにくくなる点です。日本語にすると「締切直前(の依頼)」でしょうか。
第4位:アカウント
「特定のクライアントにおいて自社から参画している全プロジェクト」の意味で使います。
A社において自社が参画しているプロジェクトが複数ある場合、それらすべてのプロジェクトを束ねたものを「A社アカウント」と呼びます。
語源は銀行口座を意味する「アカウント(account)」。1つ1つのプロジェクトには予算=出せるお金の上限があり、予実管理をすべき対象であるため、銀行口座に見立ててそう呼ぶようになった……と、私は思っています。
たとえば
- 「Aアカウント全体ミーティング(A社の全プロジェクトメンバーが参加する会議)」
- 「Bアカウントは当社にとって積極投資すべきと考えている」
など、主に社内向けに使います。が、クライアントに言ってしまうことがあり、「アカウントってなんですか?」と聞かれたりもします。
日本語で言うと「全プロジェクトチーム」でしょうか(あまり日本語になっていませんが……)。
第3位 : プロパー
「新卒」の意味で使います。
「適切な」をあらわす「プロパー(proper)」が語源ですが、私は「白紙状態の新卒から自社の価値観や仕事のやり方に染まってきた=自社に最適化された」という意味で「プロパー」と呼んでいるものと理解しています。
たとえば
- プロジェクト配属前の面接にて「きみはプロパー?」と質問する
- 「御社の価値観がなかなか醸成されない原因は、プロパー社員が少なさにあるのでは」
などのように使います。
日本語では「生え抜き」です。ちなみに中途入社は英語で「Experienced Hire」なんですが、対応するカタカナビジネス用語はありません。そのまま「中途」と呼びます。
第2位 : モジュール
「研修メニューのひとかたまり」を意味します。
「まとまっているもの」をあらわす「モジュール(module)」が、主に研修メニューの文脈でよく使われている結果、このような意味になったのではないかと思います。
たとえば
- 「この研修はロジカルシンキング、ラテラルシンキング、クリティカルシンキング3つのモジュールで構成されています」
- 「モジュール1では主にMECEやSo What/Whyについて学びます」
などのように使われます。
日本語では「章」や「節」が近いかもしれませんが、素直に「パート1、2、3」などと呼ぶほうがよいかもしれません。
第1位:ロジ
「誰かがどこかへ行き着くために必要な一連の手続き」の意味で使います。
もともとは「物流(兵站)」をあらわす「ロジスティクス(logistics)」からくる言葉なのですが、物の流れではなく人の流れを整える意味で使われ始めたものと解釈しています。
たとえば「今度◯◯社の方が来社されるので、ロジお願いしていいですか?」という場合の「ロジ」には、以下のタスクが含まれます。
- 住所、最寄り駅、階数などの案内
- 本社ビルへの入館手続きの案内
- 当日の出迎えや付き添い、電話対応
- 帰りの見送りと、入館証の回収
- その他必要な手続きがあれば全部
「ロジ」を端的な日本語にするのは難しいのですが、あえて訳すなら「ご案内」「付き添い」かなと思います。
わからない言葉を使わない、放置しない
ショートノーティス、アカウント、プロパー、モジュール、ロジ。私がつい使ってしまう、わかにくいカタカナビジネス用語を紹介してみましたが、あなたはいくつわかったでしょうか? 全問正解された方はきっと、外資系企業の「プロパー」なのだと思います。
会話の目的は、通じあうことです。話し手はわかりにくい言葉を使ってしまわないよう気をつけ、聞き手はわからない言葉があればその場で聞く、あるいは積極的に学ぶ。
そういったマインドセットでいれば、互いのボキャブラリーがリッチになるのでコミュニケーションがスピーディーになり、結果良いリレーションを作れるので、結果互いのケイパビリティをよりハイレベルにレバレッジ……おっと、失礼しました!
そういった姿勢でいれば、意思疎通が円滑になりやすく、結果良い関係を早期に築けるため、互いの知見をより建設的に活用でき、結果として生産性を高められるのではないでしょうか。
以上、「無駄なカタカナビジネス語の断捨離」というテーマで、最前線からお送りしました。