失敗パターン2:方針があいまいな作業をしてしまう
朝の時間割は作った。やることは明確だ。頭もスッキリ。上司に見せる資料を一気に作るぞ!
と、着手したものの、思った通りに進まない。一人で考えてもなにも出てこない。朝9時からのレビューはもうすぐ。とにかく手当たり次第スライドを作り、なんとか迎えた出社時間。朝型のアウトプットを上司に披露するも「全然違う。やり直し」の一言で量産した資料はすべて無駄に……。
こうなった原因は、資料の作成についての前提や方針を上司に確認していない状態で、資料を作り始めてしまったからです。「わからない部分は仮説を立てて先に進む」という動き方は好ましいものの、方針があいまいな状態で突っ走るのは、手戻りのリスクが大きすぎます。
特に朝のように一人で仕事に打ち込む時間は、その場で上司に方針を確かめられないので、最悪の場合、始業前に作成した資料がすべてやり直しになってしまいます。当時の私は一人よがりの仮説で仕事を進めていたのです。
そのため私は、出社前の時間に回す仕事を厳選することとしました。 たとえば、
- 仕事の前提が固まっているもの(その場で上司やクライアントになにかを確認したり、決めてもらう必要がない)
- 最初から最後まで一人で完結できるもの(方針を考えるところから最終的な資料作成まで、自分一人で行える)
など、一人で進めても手戻りリスクが小さい仕事を朝の時間に回しています。
これらを見極めるには、自分の手持ちの仕事それぞれの「SIPOC(サイポック)」を明確にしておくことが大事です。SIPOCとは仕事の流れをあらわす次の5要素の頭文字です。
- S:Supplier(インプットの提供元)
- I:Input(仕事に必要なインプット)
- P:Process(自分一人で行う仕事)
- O:Output(作るべきアウトプット)
- C:Consumer(アウトプットの提供先)
S(Supplier)から十分なI(Input)が渡ってこないと、自分ひとりでP(Process)をいくらがんばってもO(Output)は作れません。前述した私の失敗は、純粋にInputが足りなかったのです。 朝型にすることで作った時間を一人での仕事時間にあてるなら、十分なI(Input)がまとまっている状態を、前日までに作っておきましょう。
失敗パターン3:せっかくの朝の「集中力」を無駄づかい
時間割を作って、やることも明確。SIPOCも確認済。朝にあてる仕事は一人でできるもののみ。あとはやるだけ!当初の予定通りに、データ整理やエクセル作成など、簡単な仕事をひたすらこなす。効率よく終えられたのでハッピーな朝型時間だった……。
と思ったのもつかのま。簡単な作業を優先した影響で、頭を使う難しい仕事を場合によっては昼食後の眠い時間帯にこなす羽目に。回らない頭でズルズルと過ごしてしまい、結局その日は深夜残業。せっかく朝から仕事をしたのに、働いた時間が長くなるだけだった…… 。
こうなった原因は、集中力がとぎすまされる朝の時間帯を、簡単な「作業」にあててしまったことです。 仕事には「判断」「連携」「作業」の3種類があります。
- 判断:先を見通した意思決定
- 連携:人との議論や連絡
- 作業:資料作りなど一人で行うもの
これらを、より思考力が必要な順に並べると、「作業」より「連携」、「連携」より「判断」に集中力が必要です。 つまり頭が回る朝の時間は「判断」にあてるべきなのです。逆に昼過ぎの眠い時間は、人と話すことで目が冴える「連携」や、頭ではなく手を動かすタイプの「作業」に向いています。
このように、仕事のタイプに応じて適切な時間帯をあてはめることが、「ゴールデンタイム」である朝の時間、ひいては1日の仕事時間を無駄なく活用できるポイントです。
そこで、集中力・判断力の高い出社前のゴールデンタイムに、その日に自分が行う全体の方針を「判断」し、出社後に「連携」「作業」をスピーディにこなすようにしています。
別の言い方をするならば、出社前の「計画する自分」から、出社後の「実行する自分」に指示を出すようなイメージです(詳しい方法は私のブログで紹介しています)。とはいえ仕事は判断の連続です。昼過ぎの眠い時間帯に「判断」が求められることもあれば、刻一刻と変わる状況など外部からのインプットが変われば正しい判断=結論が変わることもあります。そのため「判断」を朝だけで完結させることはできません。
しかし私の体感として、「状況が変わったように見えるけど、やっぱり朝の判断が正しかった」となることが多いです。朝の自分のほうが、シャープに先を見通せているからでしょう。そのため、昼過ぎに入ってきた新しい情報が原因で判断に迷ったときは、原則的に朝の自分を信じることにしています。
「朝」の時間だからこそ、できることは何か?
今回は、私が効果的な朝型のワークスタイルを身につけるまでの失敗談と改善アプローチ、具体的な施策をご紹介しました。
- 始業前にカフェに行くことが目的になってしまい、朝の時間を無駄に過ごしてしまう
→ 朝の時間割を作り、やることを明確にする
- 方針があいまいな仕事を朝の時間に割りあててしまい、結局手戻りをおこしてしまう。
→ 前提や方針は事前に確認し、仕事のSIPOCを明らかにしておく
- 単純な「作業」を朝の時間に割りあててしまい、集中力を必要とする仕事を頭の回りにくい時間帯に押しやってしまう
→ 「判断」に関する仕事こそ朝型でこなす
そもそも朝の時間は、「頭がリフレッシュされて高回転になりやすい」「一人で集中できる」という特性を持っています。これらを活かせる仕事を朝に割り当てることで、アウトプットの質と量を、グッと高められるでしょう。ぜひ明日の朝に向けて、「朝の時間だからこそできること、やるべきことはなにか」を考えてみてください。
以上、「無駄な朝型を断捨離する」というテーマで最前線からお送りしました。