●3つのW――Why・What・Whenが大切
3つのWとは、 以下を指します。
・必要性と目的(Why)
・作るべきものと担当範囲(What)
・期限(When)
まずはWhyです。そもそも突発的な依頼の多くは単なる「思いつき」です。依頼された仕事が本当に必要なものなのか、安易に受ける前に確認します。
先ほどの私の例でいえば、次のようなものです。
例)『追加でこんな資料もつくってくれない?』→「誰がなにに使うんですか?」「なにをどうするためのものですか?」
目的があいまいな依頼に、貴重な時間を割く必要はありません。Whyは必ず確認しましょう。
次にWhatです。その依頼で相手が望む成果や、自分の担当すべき範囲はどこまでかを確認しましょう。
例)『関連しそうな事例をまとめておいてもらえる』→「具体的にはどんな事例ですか?」「どの範囲まで調べればいいですか?」
仮にそれらが明確でないとしたなら、依頼者の頭の中で仕事の完了基準や依頼範囲があいまいなままということです。これでは「やっぱりこうして」「こっちも直して」「ついでにコレも」と、芋づる式に細かな依頼が重ねられる「おかわりし放題」の無限地獄に引き込まれかねません(冒頭に述べた、私の若手時代のパターンです)。
最後にWhenです。期限が決まっていなければ、どれだけアクセルを踏んでその仕事にあたるべきかの緊急度と、手持ちの仕事との優先度をいかに調整すべきか判断がつかないので、必ず対応期限を確認します。
例)『全体の体裁の最終チェックをよろしく頼む』→「いつまでにお渡しすればいいですか?」
それに、必要性と目的(Why)、作るべきものと担当範囲(What)が明確であっても、期限が非現実的なレベルで短いなら、それは単なる無茶ぶりです。 「その内容で3日は無理です。5日は必要です」「Quick and Dirty(内容は荒くともスピード重視)前提で、中身の精度が荒くてよいなら3日でいけますが、どうしますか?」など、期限や品質について交渉する勇気を持ちましょう。
コンサルでは、このような3つのW(目的・内容・期限)について依頼者に確認することを基本として新入社員研修で教え込まれますし、できていない場合は厳しく指導されます。
クライアントからの仕事の依頼についても、あまりにも無目的かつ無茶ぶりがすぎる場合、盲目的にYesと言わず「目的・内容・期限について再度精査させてください」とまずは返事します。そうしないと、「とりあえず走り出して時間や工数を投入したが、的はずれなものができあがる」という無駄にさらに対応することになるためです。
●プラス1のW――他の人を巻き込む(Who)
もう1つ考えたいのが、「他の人を巻き込む」という視点です。
突発的な依頼の内容が単なる作業、それも1人で手を動かせば事足りそうなものなら、手持ちの仕事とのかねあいを検討しつつ受けても構いません。
しかしそもそも、
・必要と想定される作業量が多すぎる(量の問題)
・自分のスキルや知識では簡単に解決できそうにない(質の問題)
といった場合、1人で受けるのは危険です。
そこで、量の問題であれば「もう1人誰かつけてもらえませんか」、質の問題であれば「依頼内容に詳しい協力者を紹介してくれませんか」と依頼者に聞くべきです。短い期限で大変な仕事をこなすという無理な依頼をしてきた以上、それを完遂するためのリソースを調達する責任が依頼者にもあります。
もし「誰も連れてこられない」というのなら、適切な人員の確保を組織にかけあってもらわなければなりません。組織全体としてどの仕事にリソースを重点配分すべきか、もっと組織の上位層の視点から判断してもらうようにする、ということです。 社内リソースは有限であり、その配分をマネジメントすることは上層位の役割であり責任です。
コンサルの場合、3Wの確認は前提として、もう1つのWである「他の人を巻き込む」が重視されます。 「Know How(自分が何を知っているか)」より「Know Who(誰が何を知っているか、を知っていること)」が価値を持つことが多いからです。
全体としての成果を最大化するためには、適材適所、得意な人に得意なことを任せたり聞いたりするほうが早い。1人で戦うのではない、チームで戦うのだ。……という考え方が浸透しているのです。
もちろん自分のスキルや知識を伸ばす視点も大事です。しかしだからといって1人で抱え込むより、詳しい人を呼んできて協力してもらいつつ、その人のやり方や知識を目の前で見て「盗む」ほうが学習効率は良いでしょう。 こうして、降りかかってくる無理難題を効率的に解決しつつ、自分の力も育てていくのです。
Noを言える「ちょっと嫌なヤツ」になろう
今回は「1分だけ」から始まる突発的な依頼、とくに無茶ぶりへの対処法として「3+1個のW」の確認を紹介しました。
もちろん、ビジネス上の理由があり、ゴールも明確で、期限までに達成可能もしくは必要なサポートが得られるという状況下なら、突発的な依頼であっても受けて然るべきです。 しかしそれ以外の「Whyが不在の思いつき」や「What/Whenのバランスがおかしい」「必要なヘルプが得られない」といったタイプの依頼は無茶ぶりであり、ただの降りかかる火の粉です。きちんと見極め、振り払わねばなりません。
そのため、「1分だけ」に脊髄反射で「Yes」「Yes」をくり返して沼にハマるのではなく、1つひとつの依頼に「逆質問」をぶつけ、非現実性を感じたら正当に「No」を言いましょう。具体的な「逆質問」の例を、運営中のブログ記事「仕事の無茶振り対策に有効な『5つの逆質問』」で紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
以上、「突発的な依頼を断捨離する」というテーマで最前線からお送りしました。