日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2018/07/10 10:07
先週末、所用で関西に出かけてきた。豪雨によって西日本各地で多くの被害が出ており、新幹線は1時間40分遅れ、京都で降りるとJRはほぼ運休という状況で、修学旅行生や外国人観光客であふれかえっていた。
そうした中、奈良の興福寺を訪れた。興福寺の北円堂には無著・世親兄弟の像がある。ともに運慶の指導にもとに造られた立像で、いずれも国宝に指定されている。この無著、無著菩薩といわれるが、4世紀に実在したインドの僧侶で法相教学の確立者とされる。「むじゃく」と読み、漢字は「無着」と書かれることもある。
ところで、一定の年齢以上の方だと無着成恭という名前を聞いたことがあるかもしれない。山形県出身の僧侶で、「生活綴り方運動」を提唱したことで知られる。著書『山びこ学校』はベストセラーとなり、今井正監督によって映画化もされた。その後は、TBSラジオ「全国こども電話相談室」のレギュラー回答者を28年間にわたってつとめている。
僧侶の名字は明治以降につけられたもので、その多くは経典や仏教用語などからとられたものが多い。「無着」という名字は山形県にわずかしかなく、この無著(着)菩薩に因むと思われる。