効率化マニアの外資系コンサルが教える! 無駄な時間をゼロにする「時間の断捨離」最前線<第3回>
現役外資系コンサルとして膨大な仕事を最少の時間でこなしつつ、月間10万PVブログ「NAEの仕事効率化ノート」も運営するNAEさんに、ビジネスの現場で役に立つ時短術のコツを教わります。今回は、使い方を間違えると時間をとられてしまう「リマインド」の無駄を断捨離する方法について。
何度リマインドをかけても動いてくれない
頼んだはずの作業が全く進んでいない。何度もリマインドをしても動いてくれない。そのせいで自分の作業に割ける時間がどんどん奪われ、やっと対応してくれたと思ったら締切3日前。自分が深夜残業にまみれるハメになってしまった……。
仕事はチームプレイなので、誰かが動かなかったら全体がうまく回らないものです。とくに自分の前工程の人がタイムリーに対応を進めてくれないと、割を食うのは結局自分です。
だからこそ適時適切なリマインドを試みるものの、「そんな事情なんて知らないよ」とばかりに、リマインドをスルーする困った人がいます。どれだけリマインドをくり返しても動いてくれず、リマインドの工数だけを吸い取っていく、「リマインド沼」とでも呼ぶべきものです。
では、どうすればいいのでしょうか?
そこで今回は、タイプ別に動いてもらいやすいリマインドの方法を紹介します。 「無駄なリマインド」を断捨離して、仕事を依頼する側・される側とも効率的に動けるようにしていきましょう。
「ん?」タイプ――とりあえず返事だけで、動いてくれない
「ん? どういうことだ?」と依頼内容をよく理解していないのに、とりあえず「わかりました」と返してしまうタイプです。求められていることの中身がわかっていないゆえどう動けばいいかがわからず、そのまま時間が過ぎてしまうこのタイプは、再度リマインドしても、また「わかりました」と返事が返ってくるだけです。
私の経験上、入社して間もない若手など、「最小限の指示を出せば想定した品質を満たすアウトプットを自分一人で作り上げられる(そのために必要な関係者とのコミュニケーションまで自分の判断で行える)」レベルに至っていない人に作業を頼むとこのパターンに陥ることが多いです。
このようなタイプには、依頼する時点でアウトプット(依頼内容)と期限だけでなく、プロセス(作業内容)まで教えるなど、リマインドの際に細かく具体的に指示することが効果的です。
たとえば、「明日の定例会議までに売上分析の資料を作ってください」と依頼するとします。それで動いてもらえなかったら、リマインドの際は「明日の定例会議までに、日別の売上推移のグラフ、昨年同月比、推移傾向と考えられる原因を2~3個箇条書きした資料を作ってください」と噛み砕いて伝えます。
こう伝えれば、具体的な作業がイメージしやすいので、動いてもらいやすくなるでしょう(もちろん、最初からこのような依頼ができるならそれがベターです)。
余談ですが、コンサルでは社内外問わず「アウトプットイメージ」を使います。アウトプットイメージとはいわゆる成果物の設計書にあたるものです。 パワポの場合の具体例を、運営ブログの記事「マジやめて!「よしなに」の意味を誤解した使い方が厄介すぎる」で紹介していますので、よかったら参考にしてください。
「は?」タイプ――自分のペースで仕事を進めて、後回しにされることも
何かを頼んだとき、「は? それ今すぐ必要?」といったフレーズが返ってくるタイプ。よく言えばマイペース、悪く言えば自分勝手とも言えるこのタイプは、手持ちの作業を、自分のペースでこなすことがなにより大事で、自分なりの優先度を重んじるあまり、新しい依頼を後回しにしてしまいます。
そのため、本人のToDoリストに余裕があるならまだしも、そうでない場合は「締切を守る気がないモード」に入ってしまいます。いくらリマインドメールを送っても、無視を決め込むのです。
私の経験上、このタイプは
- 「仕事より私生活」「仕事では無理しない」と割り切っている人(とくに40~50代)
- 生き字引のような人(専門知識が仕事での提供価値の源泉になっているため、その人の対応タイミングで仕事の期限が決まる)
に多いように感じます。
このようなタイプには、自分の依頼がないがしろにされたら誰がどう困るのか、実害を伝えるのが良いでしょう。言い方は悪いですが、「お前が動かないせいでこうなるんだが?」とプレッシャーを与え、依頼の重要性を実感してもらうのです。
たとえば、「この案件の対応方針について、どのようなリスクがあるかアドバイスください」と依頼して無視されたとします。そのリマインドの際には
- 専門家の知見なしに突き進むと、手戻りして遅延する可能性が高まる
- お客様に的はずれな方針を言ってしまうと会社の信頼を損ねてしまう
- 対応を誤れば、炎上してプロジェクトメンバーが疲弊してしまう
など、仕事のQCD(Quality:品質、Cost:費用、Delivery:納期)や「誰がどうなる」を絡めて伝えてみるとよいでしょう。
コンサルだと、社内向けコミュニケーションの場合、「なんでこれ終わってないの? これじゃやろうとしていることが全然できないじゃん。ねえ、なんで? なんで?」とストレートにプレッシャーをかける人もいます。
対社外だともう少し言い方は柔らかくなりますが、「あなたの対応が課題=進捗阻害要因になっている」「こんな実害が出ている」「対応をご相談したい」という伝え方をすることが多いです。
「あ!」タイプ――うっかり屋で依頼がなかったことに
「あ! 忘れてた」と、全く悪意なく依頼したことを忘れてしまう「うっかり屋」がこのタイプ。依頼されたことをメモやToDoリストに書き残さず、記憶から抜けたタイミングで自然と「なかったこと」にしてしまうのです。
ToDo管理くらいしろよ……と思うかもしれません。しかし、
- 目の前の仕事を高スピードでこなす瞬発力はある一方、記憶力に欠ける
- そもそもメモやタスク管理など、ビジネスの基本ができていない
という人が一定数いるのもまた事実です。本来はToDo管理の基本くらいは身につけておいてほしいものですが、直近の仕事をこなすためには、頼む側も対応を考えておく必要があるでしょう。
このタイプは、リマインドの方法やタイミングを工夫して、記憶をリフレッシュしてあげれば動いてくれることが多いです。
たとえば、メールで依頼したならば、リマインドはチャットや口頭で行います。複数チャネルで伝えることで記憶定着率アップを狙うのです。また本人の余裕がありそうなタイミングでリマインドして、その場で依頼に着手してもらうのも有効です。
ToDo管理を新卒時点で叩き込まれるコンサルであっても、社内でこのタイプと出会うことがあります。地頭力×集中力×瞬発力でひたすら目の前の仕事を超高速で処理していくタイプのコンサルです。
考えるのも早ければ手を動かすのも早いのですが、ToDoの取り漏らしがあったり手続きなどの仕事が苦手だったりするため、そういったコンサルが上司の場合、「上司のToDo管理とリマインド」が部下の最重要タスクになる……なんていう場合もあります。
一発で相手を動かして、リマインドを断捨離しよう
本記事では、効率的なリマインドの方法をタイプ別に3つ、お伝えしました。
- 指示を細かくして理解度を上げる
- 対応しない場合の実害を伝え、重要性を実感させる
- チャネルやタイミングを工夫する
リマインドは本来的にはなくてもよいものです。相手が依頼どおりに動いてくれてさえすればがいいからです。実際には、依頼した相手がその時点で用件を正しく理解し、内容を忘れず、締切までにアウトプットを確実に出してくる……ということはめったにありません。
だからこそ、それをカバーするためにリマインドは必要ではあるものの、単なる追加作業であることには変わりないので、できる限り効率化していきましょう。
以上、「無駄なリマインドを断捨離する」というテーマで最前線からお送りしました。