日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2017/05/29 14:56
動物のつく名字はたくさんある。しかし、昆虫のつく名字は少ない。なぜだろうか。
そもそも名字は、地名や地形、風景など、日常生活でよく目にするものに由来することが多い。もちろん、その対象となるのは現代ではなく、中世から近世にかけての風景だ。それも、人口の大半が住んでいた農村の風景が中心で、名字の故郷は里山にあるといっていい。
だとすると、昆虫こそ昔の里山ではありふれたものであったはずだ。チョウやトンボは里山を飛び回っていたしずだし、セミやカマキリなどもたくさんいたに違いない。ところが、こうした昆虫に因む名字というのはほとんどない。1万位までに入っているのも9000位台の「蝶野」くらい。それどころか、「虫」のつく名字すら7000位台の「虫明」のみで、これも昆虫ではなく岡山県の地名に由来するもの。
名字は、家と家を区別するために自然発生的に生まれたものが多い。当時の里山では、昆虫はどこにでもある当たり前のもので、昆虫で家を区別するのは難しかったのだろう。そもそも、飛び回る昆虫で特定の家を指し示すのはかなり無理がある。
「山本」や「田中」など、メジャーな名字の由来はありふれた光景に因むものが多いが、ありふれすぎていてもそれほど多くはならない。