日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2017/03/06 10:04
先日、テレビ放送で名字の生まれた背景を説明するために中世の村の模型をつくるという話が出た際に、スタッフから面白い本を紹介された。2002年に朝日新聞社から刊行された「週刊朝日百科」のシリーズの一つ「日本の歴史」に納められた「中世の村を歩く 寺院と荘園」という本である。
この中に、備中国新見荘(岡山県)について、平安時代後期、鎌倉時代、室町時代、江戸時代前期と4つの時代の村の様子を示したイラストが掲載されているのだ。同じ場所についてこれだけ長い期間の変遷がわかることは珍しく、イラストに起こしていることでわかりやすい。
一般庶民まで名字の使用が広がった時代はよくわからない。しかし、室町時代後期にはかなり浸透していたのではないかとみられることから、当時の村のあり方をみることで、名字誕生の様子をうかがうことができる。
新見荘でも、平安時代には平地の半分ほどしか耕作されていなかった谷間が、室町時代には谷間一円が水田として利用され、家の数もかなり増えている。谷の入り口には地頭屋敷があり、ここを起点として谷間に住む人々は地形や方位由来の名字を名乗ったことがうかがわれるのだ。