人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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熊谷の読み方

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2016/06/13 15:43

法然の弟子となって出家した熊谷直実は蓮生と号し、熊谷館の一角に庵を結んだ。その庵の跡に白隠上人が建立したのが。熊谷市仲町にある熊谷寺である。かつては参拝できたということだが、現在は参拝不可。境内には入ることができなかった。

さて、熊谷市の読み方は「くまがや」である。現在の市名だけではなく、中山道の熊谷宿も「くまがやしゅく」で、それ以前も熊谷郷(くまがやごう)だったようだ。しかし、熊谷直実を「くまがい・なおざね」と読むように、今でも「熊谷」さんは「くまがい」と読む。

熊谷の地が熊谷名字のルーツの地であるにもかかわらず、読み方が異なるのは不思議なことだ。地名は、蛇行する荒川を指した「曲谷(くまがや)」に由来するという説が有力なようだが、他にもいろいろあってはっきりしない。

では、名字はすべて「くまがい」か、という意外とそうでもない。埼玉県では二割程度が地名と同じく「くまがや」と読む他、関東の他県でも「くまがや」が一割ほどいる。一方、関西から鳥取県にかけては「くまたに」とも読み、とくに鳥取県では半数近くが「くまたに」。また、福岡県の朝倉市や東峰村に集中している「熊谷」は「くまがえ」である。

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