日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2016/04/11 14:31
先週、さいたま市の「鹿手袋」という地名を紹介した。もとは「しってぷくろ」と読んだが、「しって」というと、南武線の「尻手」が有名だ。
川崎駅から南武線に乗ると、次の駅が尻手駅。これで「しって」と読む。なんとなく由緒のありそうな地名だが、正式な地名になったのは意外と新しく昭和43年のこと。尻手駅ができたのは昭和2年(当時は停留場)なので、駅が先で後から正式地名となったことになる。また、尻手駅そのものは川崎市幸区にあるが、地名としての尻手は横浜市鶴見区尻手。駅が両市の境界線にあるのだ。
尻手は、もともとは矢向の一部だったが、駅ができた際に地元の小地名をとって「尻手駅」と名づけられ、のちに正式な地名に昇格したらしい。
「尻」というのは「頭」に対する言葉で、『日本国語大辞典』(小学館)をみると、釣竿の手もとのことを「尻手(しって・しりて)」と言っていたという。つまり矢向村の中心からみて反対側を尻手と呼んでいたのだろう。
ここ以外にも、茨城県下妻市に「尻手」という地名がある他、神栖市には「知手」とかいて「しって」という地名もある。関東では集落の中心部の反対側を「しって」と読んだと思われる。