名南経営 presents ─vol.2─
先日、ある新聞に、7割の企業がマイナンバー対応に着手していない、という記事が掲載されていました。これは、6月に日本情報経済社会推進協会がまとめた資料によるもので、本稿の掲載時期とは数か月間の時間差はあるものの、いよいよ制度が始まろうとしている現時点においても、相当数の企業がその対応が完了していないのは事実であり、憂慮すべき事態ではないかと思います。
マイナンバー対応が遅れている原因
「具体的にどうしたらよいのかわからない」といったことが対策が進まない理由のようですが、じつは、総務部長等がひとりで、あるいは人事労務部門のメンバー数人で検討していることも遅延要因となっているようにも感じます。
制度開始時の企業におけるマイナンバー対策では、従業員のマイナンバーをどのように集めて保管し、情報が漏えいしない仕組みをどう構築するかという点に主眼が置かれて検討が進められています。
ところが、現実的には従業員のマイナンバーだけでなく、顧問弁護士や税理士など、支払調書対象者もマイナンバーの回収等の対象となることから、総務部門だけで検討を進めるには限界があります。
プロジェクトチームで“漏れない”仕組みをつくる
そこで、まずは社内でプロジェクトチームを結成し、そのチームで今後の対策を検討してください。そうしないことには、焦りばかりが募り、中途半端な状態で制度の開始を迎えることになります。
このプロジェクトチームについては、具体的には、総務部門のみではなく、経理部門、さらにはITやシステムがわかる部門や担当者を交えて結成すると効果的です。
社内の「総務」「経理」「IT」に詳しいメンバーが結集された後、次に行なうべきことは、自社におけるマイナンバーの対象者の洗い出しと、回収責任者の明確化です。そうすれば、全体的な業務の流れが整理できます。また、こうした進め方は企業規模を問いませんので、すべての企業において同様に考えてよいでしょう。
その後は、どのような方法で回収をして保管をするのか、システム面の対応はどうしていくのか等を議論しながら、そのプロセスにおいて情報が漏えいする流れが想定されるのであれば、これを防ぐように改善をし、一連の流れを簡潔な取扱い規程等にまとめていくと、最低限の対応を済ませることができます。
そもそも、企業におけるマイナンバー対策の目的は、システムを入れ替えることでもなければ、取扱規程を詳細につくり込むことでもありません。対策の検討にあたっては、「機密情報が漏えいしない仕組みを構築する」という目的を見誤らないように注意ましょう。
(次回は10月13日・火曜日に配信予定)
【執筆者プロフィール】
社会保険労務士法人 名南経営
社会保険労務士 服部英治
1972年岐阜県出身。大手社会保険労務士事務所を経て1999年に入社。名南コンサルティングネットワークのトップコンサルタントの一人として、全国各地でクライアント企業の労務コンプライアンス支援(労務監査)、IPO支援、人事制度改定支援、各種人事労務相談等に応じている。医療福祉業界や運送業界の人事労務に精通、他にも海外人事労務等を得意としている。